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「そう言えば、まだちょっと先の話になるんだけど……七夕祭りって言うのがあって、ペアの花火大会観覧チケットが当たったの。良かったら二人で行ってみたらどうかしら?」 瀬名の隣のスツールに腰掛け、ナオミがニッコリと微笑む。 そういえば、駅前のアーケードでポスターを見掛けたような気もする。 「いいんですか? ナオミさんは?」 「アタシの彼、そういう所苦手なのよ。だから、二人で行ってきなさい。この間、覗き見しちゃったお詫びよ」 理人と瀬名の仲を知っている数少ない人物の一人でもある彼女はそう言って悪戯っぽく笑う。 「つか、お前彼氏いたのか……」 ナオミの口からそんな話を聞いたのは初めてだった。瀬名も驚いた顔をしている。 「やぁねぇ、アタシにだって男の一人や二人、三人くらいいるわよ」 「いや、居すぎだろっ! 何股掛けてんだ!?」 思わず突っ込みを入れる理人に、ナオミは意味ありげな視線を向けてくる。 「相変わらず真面目ね。冗談よ、冗談」 ふふ、っと笑ってナオミは半ば強引に理人にチケットを握らせると再び厨房へと消えていった。 「たく、何処までが本当の話かわかんねぇ奴だな……」 「でも、よかったですね。七夕祭りか……。昔、姉さんと良く行ってました」 「……へぇ?」 瀬名が懐かしそうに目を細め、ぽつりとそう漏らす。 彼の姉、真奈美とは正直言っていい思い出が一つもない。 寧ろ悪い印象しかないのだが……。 微妙に表情を曇らせた理人を見て、瀬名が苦笑しながらそっと肩を抱き寄せ耳元にふぅと息を吹きかけながら囁いた。 「大丈夫ですって。どうせ姉さんは地元に居るだろうし……誰にも邪魔はさせませんよ」 ゾクリとした感覚に身体を震わせ、理人は慌てて瀬名を押し返す。 その様子に瀬名はクスリと小さく笑い、肩をすくめた。 本当に油断ならない男である。 その後、ナオミが作ってくれた料理に舌鼓を打ちながら飲んでいると、不意に尻ポケットに入れていたスマホが震えた。 こんな時間に誰だろうか? 最初は無視を決め込んだが、どうにも振動が止む気配が無い。 さり気なく表示されている名前を確認し。ぎくりと身体が強張った。 そこには、蓮と言う一文字が表示されていたからだ。

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