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一瞬躊躇ったが、トイレに行く振りをしてスマホに耳を押し当て電話に出る。
「おい、いきなりかけて来るな」
『酷いな。せっかく真紀を完全に沈黙させる方法を思いついたのに……』
「なん、だと……?」
理人は息を呑んだ。
まさか、本当にあの女を消してくれるというのだろうか? だとしたら願ったり叶ったりだが。
「それは本当なのか?」
『あぁ。だが詳細は教えらえない』
「は? なんでだよ」
『なんででも、だ。ちょっとしたツテがあってね。それより、お前に頼みたい事があるんだが、聞いてくれるか?』
一方的にそう告げられ、理人は眉を寄せる。
この男が自分に頼みごと? どんな風の吹き回しだろう。
理人はチラリと店に居る瀬名の様子を伺った。取り敢えず、話は聞こえていないようだ。
「交換条件か?」
声を潜めて理人が尋ねると、電話の向こうから微かに笑った様な吐息が漏れた。
『ハハッ、話が早くて助かるよ。僕の言うことを何でも聞いてくれると言うのなら、10日以内にあの女を始末してあげるよ。どうする? 困ってるんだろう?』
確かに、理人が今一番欲しいのは、あの女の完全なる沈黙だ。あの女に脅かされない日常が手に入るのなら、そんな嬉しいことは無い。今は東雲に動向を探らせてはいるが、いつ襲ってくるとも限らないからだ。
しかし、蓮を完全に信用してもいいものだろうか? 何でも言う事を聞けと言う条件も気になる。
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