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「ハハッ、そんなに警戒するなよ。流石に傷付くな」
一体、どの口がそれを言うのか。相変わらず蓮は食えない男だ。何を考えているかわからない。
「理人、酒配ってくれ。俺は車で来たからノンアルで」
「車? 飲まないのか?」
「僕が酒弱いのはお前も知ってるだろう? 飲みすぎて好きな奴に二度も振られたくは無いからな」
グッと腕をひかれて、蓮が唇を寄せてくる。咄嵯に身を引こうとするが、腰を強く抱かれ身動きが取れなくなる。
「ちょっ、やめろって……」
「やめない」
「ちょっと! 理人さんに触らないでください。嫌がっているじゃないですか」
慌てて振りほどこうとしていると、瀬名が蓮の腕を掴み理人を引き寄せ理人を奪い返す。
「おお、三角関係っすか? さっすが鬼塚先輩モテますね!」
「なんだか、ワクワクするわね!」
外野二人に茶化されて、理人は頭痛を覚えた。
「おい、ナオミ……。なんだよこのカオス空間は……もう、帰っていいか?」
「ぇえ……。せっかく来たんだし、そんな事言わないの。アタシ、お弁当作って来たんだから」
正直言って、帰りたい。 だが、さっき蓮が言っていた真紀の件がもうすぐ片付くと言う言葉も気になる。
「……おい、蓮。本当に今日、あの件のカタが付くんだろうな?」
「あぁ。安心しろよ。約束は守るさ」
この自信は一体何処から来るのだろう? 蓮は昔からそうだ。自分の思い通りに事が運ぶと思っている節があり、理人の事をいつもコケにしていた。
「ならいいが、もしお前の言ったことが嘘だったらただじゃおかないからな」
「……へぇ、それは楽しみだ」
相変わらず何を考えているかわからない返事が返って来て、理人はチッと舌打ちすると仕方なく瀬名の隣に腰を掛けた。
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