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「なぁ、理人。もし良かったら僕の車で休ませたらどうだろう? 後部座席に毛布も置いているし、地べたで寝るより少しはマシだと思うが……。少し寝たら元気になると本人も言っている事だし」 「……」 一体どう言うつもりだろうか? 蓮の真意がわからず理人は直ぐには即答できなかった。 確かに蓮の言うように、このまま此処で寝るよりは車のほうが楽に寝かせてやれる気はする。 「車の鍵を掛けてれば問題は無いし、君の大事な恋人を風邪引かせたくないだろう?」 そう言われれば、蓮の提案は正しいような気がしてくる。 「いいんじゃない? 車を貸してくれるって言うんだから甘えちゃえば。それとも、瀬名君と一分一秒も離れたくない感じかしら?」 ニヤリと笑われて、理人は慌てて否定した。 「ちっ、違う! そんな訳無いだろ!」 「ふーん。じゃぁ、断る理由は無いんじゃない?」 「……」 ナオミはこの状況をおかしいと思わないのだろうか? それとも自分が神経質になり過ぎているだけなのか……。 理人が悩んでいる間も、蓮はどうするんだ? と、ばかりにこちらを見つめて来る。結局、理人は折れる事にした。 これ以上ここで言い争っても時間の無駄だし、蓮の思惑が読めないが、何かしらの罠を仕掛けてくるとしてもこの場でいきなり手を出す事は考えにくい。 それに、瀬名にまた風邪を引かれても困る。 瀬名の負担が増えていることはわかっていた筈なのに、大丈夫ですよ。と笑う瀬名に少し甘えすぎていたのかもしれない。 「たく、頑張り過ぎなんだよ。お前……」 恋敵の車で眠るなんて瀬名からすれば嫌で仕方のない事だろうが、背に腹は代えられない。 「すまない。じゃぁ頼む」 「了解、んじゃ、山田。お前力あるだろ? コイツを俺の車まで運んでくれ」 「へいへい……。たく、相変わらず会長は人遣いが荒い……」 文句を言いつつ従うのは、あの時の力関係の名残だろうか? 山田は、瀬名を軽々と持ち上げると駐車場まで歩いて行った。 なんだか変な胸騒ぎがして蓮が何か少しでもおかしな行動をしても気付くように、理人も二人の後をついていく。

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