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ドアを開けて運転席側のシートをずらしてセッティングした後どうぞ、と促され躊躇いながらもそこに瀬名を寝かせた。毛布は気温も上がりそうだったので、敢えて掛けずに、逆に車内が暑くなりすぎるといけないのでほんの少し両サイドの窓は開けてから、そっと離れる。 「お前、随分派手な車に乗ってるな……」 「別にいいだろ? そんな事よりほら、鍵掛けたかちゃんと確認しなよ」 「あぁ……」 理人は助手席に乗り込むと、もう一度瀬名の様子を確認する。 すぅすぅと規則正しい呼吸が聞こえてきて、特に変わった様子は見られない。起きた時に驚かないよう、気付いたら連絡するようにとスマホにメモを残し、そっと頭を軽く撫でてから理人は車をパタンと閉じた。 「心配性だね。理人は。僕は別に彼をどうこうするつもりはないよ?」 「……」 確かに、彼の行動に怪しい所は見られなかった。理人に気を遣ってか、瀬名には指一本触れていない。車の中も綺麗に整えられていて怪しい物が置いてある様子もなかった。 一連の動作におかしなことは一つも無かったはずだ。なのに、何かが引っ掛かる。 「信用できないと言うのなら、鍵を預けておくから持っておくといい」 言って、蓮は車のキーを取り出して差し出してくる。 理人の不安は拭えないが、疑う理由も見つからない。 「まぁ、瀬名君も少し寝たら目が覚めるでしょ。それまではアタシたちもお花見楽しみましょ?」 折角来たんだし! と、ナオミに促され後ろ髪をひかれる思いでその場を離れた。

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