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「そう言えば、今回の真紀の件が成功した時の報酬だが……」 「藪から棒になんだ?」 歩きながら突然話題を振られ、理人は思わず立ち止まった。 何を言うつもりだろうかと見上げると、ゆっくりと形のいい唇が近づいて来る。 「真紀を無事に警察に突き出せたら……お前を抱かせろ」 「あ?」 耳元で囁かれた言葉に息を飲む。一体何を考えているのかと睨みつけると、そこにはいつもとは違う蓮の顔があった。 「何を考えてるんだ、お前は……」 「何をって、そのままの意味だけど? 俺はお前を抱きたい。一度だけでいい」 冗談にしては、あまりにも真剣過ぎる眼差しにたじろいでしまう。 困惑して瞳を揺らす理人の頬に蓮の指先が伸びて来て、理人は咄嗟に顎を引いて逃れようとした。 だが、半ば強引に顎を掴まれ上向かされて、真っ黒い双眸と視線が絡む。 長い指先が悪戯に唇を撫でおろした。その艶めかしい仕草に薄気味悪さを感じて触れられた箇所がピリピリと粟立つ。 「よ、よせ!」 「一晩だけだ。……それ以上は望まない。お前が欲しい」 甘さの滴るような蓮の声が耳元で囁く。距離を取ろうとしたのに思いの外肩を抱く手の力が強くて振りほどけなかった。 「断る。と、言ったら?」 「その時は仕方がないな。今回の件からは手を引かせて貰うだけだ。あの女はしつこいぞ。しかも頭がだいぶキてるみたいだな。今は困らなくてもいつか必ずまたお前らの前に現れる。その時、後悔しないと言い切れるのか?」 そう言われると返す言葉がなかった。確かに真紀の性格を考えるとこの先も何かしら仕掛けてくる可能性は高いだろう。 それならば、今日のうちに捕まえてくれた方がいいようにも思える。

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