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しかし……。 「お前はどうやってあの女を警察に突き出すつもりなんだ」 「どうやってだと思う?」 質問に質問で返され、理人は答えに詰まった。 どう考えても普通じゃない方法で警察に追い込むような気がするのだが、それがどんな方法なのか想像すらつかない。 「まぁ、時が来ればわかるさ。 それで? どうするんだ? 僕の条件を飲むのか?」 「……」 蓮に身体を差し出すと言う事は、瀬名を裏切る行為に等しい。それだけは嫌だったし、絶対に出来ない事だった。 だからと言って断れる雰囲気でもない。 それにもしここで断ったとしても、蓮は必ず何か別の手段を考えてくるだろう。 結局は同じ結果になるのなら今ここで約束をした方がマシかもしれない。 理人は深く溜め息をつくと近くにある時計を見た。時刻は14時過ぎをさしている。 (大丈夫だ……。きっと何も起こらない) 仮にあと数時間以内にこの場所に彼女が現れたとしても、沢山いる花見客の中からピンポイントで自分を見付けるのは不可能に近い。 唯一の気がかりは瀬名だが、駐車場には沢山の車が停まっていたし、まさか瀬名が車の中に寝ているとは想像すらしないだろう。 「チッ。……17時だ。 それまでにアイツが捕まらなかったらその約束は無効だ。他の頼みごとを考えてくれ」 「17時か……。ふふ、充分だよ」 「……ッ」 一体、どんな手で真紀を捕まえようとしているのか皆目見当も付かない。 それなのになんで蓮はそんなに余裕なんだと、底知れない不安を覚える。 「なんなら、あと1時間以内でも僕は構わないよ?」 「……何を、企んでいるんだ……?」 「さぁ? 僕はただお前を手に入れたいだけさ」 意味深な笑みを浮かべてそう言うと、蓮は理人の腰を抱き寄せて再び歩き出した。

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