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「だからよせって! 人前だぞ!」 「ふふ、手は出さないよ。今はね。本当は今すぐホテルにでも連れ込んでぶち犯してやりたい気分だけど……」 熱い吐息が耳にかかり、ゾワリと鳥肌が立った。 慌てて耳を押さえ、真っ赤になって睨み付けると蓮は、おお怖い。と言わんばかりのリアクションをして何食わぬ顔でナオミ達の元へと向かって行く。 「ちょっとぉ、理人。何やってんの? 早く来ないと置いてくわよ」 「……っ」 「きっと、瀬名君が居なくて寂しいんだよ」 なんてシレっとした口調でナオミを蓮が嗜める。 相変わらず食えない男だ。その代わり身の速さには脱帽するしかない。 だが困った。先ほど蓮に囁かれた声や視線が頭から離れず、心臓がどくどくと物凄い速さで脈打っている。 蓮がこんな手の込んだ冗談を言う事は考えられない。 という事は、真紀の件が片付いたら本当に蓮に抱かれる事になるのか? 一瞬脳内に不埒な情景が思い浮かび、理人は慌てて首を振ってその考えを思考の隅へと追い出した。 駄目だ、考えるな。それに、17時まであと3時間もある。 どういう手を使うつもりなのか知らないが、蓮が少しでも怪しい素振りを見せたら、その約束は無効だと言ってやればいいだけだ。 そう何度も自分に言い聞かせながら、深呼吸を繰り返しざわつく心を落ち着けてから理人は三人の元へと向かった。

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