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「たく……。ビビらせてどうするんだ。すみません、ちょっと話が聞こえてしまって……。良かったらその話を詳しく教えてくれませんか?」 すかさず蓮がフォローに入り、女性の目線に腰を屈めてニコッと笑いかけながら話しかけると、今度は彼女はポッと頬を赤らめながらコクリと小さく首を縦に振った。 (クソッ、無駄に顔がいい奴は得だな) 蓮の笑顔は昔から女性に対して絶大な威力を発揮する。それがわかっていて、わざと蓮は微笑んで見せたに違いない。ただし、その横に居る男性は苦虫を噛みつぶしたような顔をしているが。 「わ、私たちも今さっき聞いた話だから詳しくは知らないんです。 高そうな赤い車を喚きながらこじ開けようとしている女が居て、たまたま巡回してた私服警察官が取り押さえたって話ですけど……」 「赤い車?」 胸のざわめきが大きくなり、どくりと鼓動が嫌な音を立てた。そんな理人の様子をみて、蓮が口を開く。 「刃物を持っていたという事ですが、誰か刺されたりとか……。けが人はいないんですよね?」 「さ、さぁ? そんな話は聞いてないから多分大丈夫だと思います……」 状況から見て、恐らく犯行は真紀の仕業で間違いなさそうだ。 そして、おそらく狙われたのは蓮の車――。 「瀬名……っ」 中に居た瀬名の事が心配だった。理人は挨拶もそこそこに人込みを掻き分け蓮の車へと急行する。

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