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「理人。あそこ!」 人込みを掻き分け進んでいると不意に蓮から腕を掴まれ立ち止まる。 彼が指さす先には警官に取り押さえられ半狂乱になっている女の姿が見えた。 「違うの! アタシは瀬名君と話がしたかっただけなの! これで鍵が開くって聞いてたのに……話が違うっ!」 何やら喚きながら真紀が黒いリモコン型のキーを見せ、必死に訴えている所だった。 「鍵……? 蓮、お前……まさか……瀬名を嵌めたのか!?」 「さぁ? 何の事だか僕にはわからないな」 すっとぼけたような口調でそう言いながら、真紀を眺める彼の瞳は恐ろしく冷酷な色をしていた。ゾッとするような暗い笑みを浮かべて、蓮はゆっくりと理人に歩み寄る。 「17時までにあの女が逮捕されたら……お前を好きにしていいって話、覚えてるな?」 「っ、そんなの……無効だ! 瀬名を……あの女をおびき寄せる餌に使いやがって……!」 「何の事だかわからないと言っているだろう? 《《たまたま》》僕の車で寝ていた瀬名君を見付けてドアをこじ開けようとしてる時に、《《たまたま》》巡回していた私服警備員に捕まった。僕は、眠そうな彼に車を貸してやっただけだ。それに、お前が僕に張り付いていたんだからわかるだろう? 僕が彼女に連絡を入れる暇があったか?」 「……く……ッ」 それを言われたら言い返せない。何か怪しいとは思っていたが確かに花見の間、蓮はスマホを一切触る様子は無かった。 本当に、偶然の産物なのだろうか? いや、そんなはずはない。もしかしたら、急に強い眠気を瀬名が催したのだって、蓮が瀬名の飲み物に何かを入れた可能性もあるのだ。 しかし、証拠がない。怪しい行動や言動は多々あるのに、それを問い詰めたところで蓮はしらばっくれるに違いない。

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