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翌朝、窓から差し込む光で目が覚めた。 夜遅くまで降り続いた雨はようやく止んでくれたらしい。カーテン越しに差し込んだ光が眩しい。 昨晩、ホテルへ戻った後もずっとあの男の事を考えていた。 あれはやはり自分の願望が見せた都合の良い妄想だったのだろうか? だとしたら随分と女々しい自分に反吐が出る。 「……はぁ」 重苦しい気分のまま身なりを整え、チェックアウトを済ませると瀬名の家の前で車を停める。 恐る恐るインターホンを押してみるが、反応はない。 何度か押したが一向に出てくる気配はなく、諦めて出直そうかと思い始めた頃 ――ガチャリと扉が開いた。 「あ……っ」 「何をしに来たんですか?」 冷ややかな声と共に現れたのは、瀬名ではなく彼によく似た顔立ちをした女性。 あの時、瀬名と一緒に一部始終を目撃していた姉の真奈美だった。 その足元にはまだ幼い子供が二人纏わりついてジッとこちらの様子を伺っている。 「瀬名君に会いに来たんです」 「帰って。貴方と話すことなんて何もないって秀一は言ってるわ」 真奈美は冷たい眼差しで理人を睨みつけるとピシャリと言い放った。 「ほんの少しだけでいいんです。話しをさせてください! お願いします!」 「帰れって言ったでしょ!?」 理人が頭を下げると、真奈美は声を荒げた。その声に驚いて子供がべそをかき泣き出してしまう。 「秀一は貴方に会いたくないの。それがわからない?」 「……っわかります。でも……俺は話がしたいんです」 「いいから帰って」 子供をあやしながら、真奈美は冷たく言い放つ。だが、ここで引き下がる訳にはいかない。 理人は深々と頭を下げた。 「どうしても、瀬名君の口から直接聞きたいことがあるんです。だから……」 「あまりしつこいと警察を呼びますよ」 取り付く島もない。真奈美は虫けらでも見るような目で理人を見下ろす。 だが、理人も引く気はなかった。 「お願いします。一分だけでもいい会わせて下さい」 「無理です。帰って!」 ピシャリと言い放ち、フンっと鼻を鳴らすと玄関の扉が勢いよく閉められた。 「チッ……」 思わず舌打ちをして、拳を強く握りしめる。此処で引き下がるのは簡単だ。 でも、それでは何の意味も無い。 「……また明日出直してきます」 そう呟くと理人は車に乗り込みその場を離れた。

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