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次の日も、その次の日も、理人は瀬名の家に足を運んだ。しかし、何度訪ねても瀬名に会う事は適わず、代わりに彼の姉である真奈美に門前払いを食らう日々が続いている。 真奈美は専業主婦でもしているのだろうか? どの時間帯に行っても出て来るのは彼女で全く取り合って貰えない。 仕事を休んで足を運ぶのも限界があり、これで駄目なら諦めよう。そう心に決めながら、今日もまた瀬名の家の前に立つ。 「あの……」 深呼吸をしてインターフォンを鳴らそうと指を掛けた時、突然後ろから声を掛けられた。 驚いて振り向くと、そこには50代~60代ほどの綺麗な女性が立っていた。 その女性は瀬名によく似ていて、姉の真奈美よりも幾分か落ち着いた雰囲気を醸し出している。一目で彼女が瀬名の母親だとわかった。 理人は彼女に一度だけ会った事がある。 「……鬼塚理人さん、ですよね?」 「はい。すみません、何度も押しかけて来て……どうしても息子さんと話がしたいのですが……」 彼女は一瞬困ったような顔をすると、チラリと二階へと視線を移し目を伏せる。 「息子と話をするのは、難しいと思います」 「そう、ですか……」 母親にまで拒絶されたと思い、理人は落胆の色を濃くする。 やはり、瀬名は自分と顔を合わせるのが嫌なのだろうか。突きつけられた現実に苦々しい思いが込み上げてきて、ギュッと胸の奥が痛んだ。 もう顔も見たくない程に憎まれていたなんて出来れば考えたくは無かった。もしかしたら何か事情があるのかもしれない。そう信じたかったけれど、こうも会う事を拒まれると、流石に心も折れそうになる。 込み上げそうになる涙を堪えわなわなと震えだした唇をきゅっと噛みしめて俯く。こんな所で、泣くわけにはいかない。すべては自分の判断ミスが招いたことだ。 今更後悔しても遅いのはわかっていたが、それでもやっぱりあの時のことを悔やまずにはいられない。 「……あの……。少し、私と話をしませんか? 近くに喫茶店があるのでそちらで」 「!」 口を開けば泣いてしまいそうで、何も言えなくなって俯いたままの理人を見兼ねてか、瀬名の母親がおずおずと口を開いた。 その言葉に、理人の心臓がドクリと大きく脈打つ。 もしかしたら、コレが最後のチャンスになるかもしれない。 「……はい。是非」 理人が小さく返事を返すと、瀬名の母親が安堵したように小さく微笑んだような気がした。

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