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両親がわざわざ自分に嘘を吐く理由などないから、恐らく瀬名が自分の話を両親にしていたと言うのは事実なのだろう。 その彼が、突然姉と共に戻って来たと思ったらぴたりと理人の話をしなくなったとしたら、怪しいと思うのは当然だ。何かあったのだろうと容易に想像が付く。 だが、瀬名本人が何も言わないので彼に直接聞くことも出来ず、こうして理人を呼び出したに違いない。理人はゴクリと唾を飲み込むと、姿勢を正し二人の目を真っ直ぐに見据えた。 「秀一には幸せになって欲しいんです。もし、君が真奈美の言うような男だったら、私たちはこの場で貴方に二度と秀一と会わないでくれとお願いするつもりだったんだよ。でも……」 そこで一旦言葉を区切ると、瀬名の父親はフッと頬を緩め母親の方をチラリと見た。母親は、やはり困ったような表情をしていたが小さくゆっくりと頷く。 「私たちには、どうしても君が秀一を騙して誑かすような悪い男には見えないんだ……」 瀬名の父親は、真剣な眼差しを理人に向け、ハッキリとそう告げた。 「話して下さいませんか、鬼塚さん……。秀一との間に何があったのか」 「家では真奈美が秀一をほぼ一日中監視していて、とても秀一から話を聞ける状態じゃないの……。真奈美も本当は優しい子なんだけど弟の事になると周りが見えなくなるというか……」 二人は本当に心配しているようで、声音からもそれが伝わってくる。話しを聞く限り、瀬名が自分と会いたくないと言っている訳ではなさそうだと感じた。 瀬名が今、何を思い、何を考えているのかはわからないが、完全に拒絶されていたわけでは無いと知れただけでも良かった。 あの時のやり取りを話すことで、今は好意的に接してくれている両親がやっぱり君は息子にはふさわしくないと言い出すかもしれない。 気持ち悪いと軽蔑し、二度と顔を見せるなと拒絶される可能性だって充分あり得る。 正直に言って、あの日の出来事を彼の両親に話すのはとても気が引けるし怖い。 だが、真実を話さなければ前には進めないのだ。 「わかりました。お二人には聞き苦しい部分もあるかとは思いますが、全てをお話しします」 そう言うと、理人はあの日起こった出来事を包み隠さず瀬名夫妻に話すことにした。

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