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19-3
雨音に混じって、名を呼ばれた気がした。
ハッとして顔を上げるが、周囲には誰もいない。気のせいだろうか? 会いたい思いが強すぎてとうとう幻聴まで聞こえて来てしまったか。
「さん……、理人さん!」
今度ははっきりとそう聞こえた。この声を自分が聞き間違えるはずが無い。
理人は弾かれたように振り返ると、闇夜に紛れて見えないその姿を必死に探し求めた。
間違い無い。確かに彼の声だった。心臓が早鐘のように鳴り響き、鼓動がうるさいくらいに高鳴っていく。
「――っ、やっと見つけた……っ」
はあはあ息を切らせながら駆け寄って来たのは、ずぶ濡れになった瀬名だった。全身から水が滴っており髪も乱れているがそんな事は全く意に介していないようで、理人の姿を目にするなり力強く腕を引かれそのまま強く抱きしめてきた。
甘い熱が理人を包み込む。力強い腕に閉じ込められて、嬉しさと愛しさが一気に押し寄せてきて堪らず瀬名にしがみ付く。
これは、夢? 会いたい思いが強すぎていつの間にか眠ってしまったのだろうか?
そうだとしても、それでもいい。
「瀬名……ごめ……っごめん……っ俺……」
「いいです。もう何も言わないで……大丈夫。全部、わかってますから」
言葉にならない想いが次々にこみ上げて来て、理人は瀬名の胸に顔を押し付け何度もしゃくりあげて泣いた。
瀬名はそれを黙って受け止めると、宥める様に理人の髪を撫でる。
「僕の方こそ、遅くなってすみません……不安にさせて」
瀬名の言葉に、理人は首を横に振った。
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