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「勝手に待っていたのは俺の方だから……っ。でも、諦めずに待っててよかった……」 体で感じる瀬名の速い鼓動が、もしかしたら自分に会うために走って来てくれたのかもしれないと思えて、思わず瀬名を仰ぐと彼も理人をジッと見つめていた。 目が合った瞬間また涙が溢れて来てぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちていく。 「いつからそんなに涙腺が弱くなったんです?」 「うるさいっ」 理人は乱暴に袖で目を擦ると、瀬名の胸元に顔を擦り付けた。こんな時ですら憎まれ口を叩いてしまう自分に嫌気がさすけど、素直になれないのはもうどうしようもない。 そろそろと躊躇いがちに彼の背に手を回すと、力強い手で背と腰を引き寄せられる。 そっと目元を撫でられ上向かされて、視線が絡む、二人の間が甘い空気で満たされていくような気がして、堪らず瀬名の首に腕を回し自分からキスを強請った。 「んっ……ん……っ……」 唇に、柔らかく濡れた舌が触れ、薄く唇を開くと遠慮がちに口内へと侵入してくる。歯列を割られ、舌が絡め取られると身体の芯が震えるような感覚に襲われ、無意識に瀬名にしがみついていた。 角度を変えて、深くなっていく接吻に身体から力が抜けていく。膝に力が入らず崩れそうになったところを瀬名に抱き留められ、その勢いのまま二人はズルズルと地面に座り込んだ。 ようやく唇が離れた瞬間、二人を繋ぐ銀糸がぷつっと切れて、瀬名の赤い舌がそれを舐め取る仕草にドキッとする。 「理人さん……」 懐かしい声色が自分の名を呼ぶ。もう二度と聞けないと思っていた声。 ずっと待ち望んでいた声――。 「夢じゃ、ない……。本物、だよな?」 「勿論です。夢なんかじゃないですよ」 瀬名が苦笑しながら、もう一度しっかりと理人を抱き寄せる。温かい……。本当に、ここにいるんだ。 そう思ったらなんだかまた泣けて来てしまい、泣き笑いのような表情を浮かべながら理人は瀬名の首筋に額を摺り寄せた。

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