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ハッとして振り返ろうとする理人の肩を掴んで引き寄せると、庇うように瀬名が一歩前に出た。 「……居るんだろ? 姉さん」 瀬名の呼び掛けに、暗闇から姿を現したのは――。震える手で傘を握りしめ、驚愕の表情でこちらを凝視している瀬名の姉、真奈美だった。 いくら再会が嬉しくて夢中になってしまっていたとはいえ迂闊過ぎた。どうしてもっと周囲を警戒しなかったのだ。こんなところ誰かに見られたら大変な事になるのは目に見えていたというのに……! 全身の血の気が引いて青ざめる理人とは対照的に、瀬名は落ち着き払った様子で姉の姿をジッと見据えていた。 「いつからそこに居たのかは知らないけど……、見ての通りだよ。僕はやっぱり、彼の事が好きなんだ」 瀬名の言葉を耳にした途端、真奈美の肩が大きく跳ねる。 「どうして? その男は、貴方を裏切ってたのよ! なのに、なんで……」 「理人さんは裏切ってなんかないよ」 「嘘よ!! 秀一だって見たでしょう? その男がホテルから出てくるところ」 「……っ」 苦虫を噛みつぶしたような顔をしながらビシッと指をさされて、理人は気まずげに目を逸らす。 「確かに見たよ。でも、あの日二人の間には何もなかった」 「どうしてそんな事が言えるのよ……」 「それは――」 瀬名の言葉に、理人は思わず息を呑む。一体なにを言うつもりだろうか? 「……あの日、二人が何を話していたのかを収めた動画を見たんだ」 「動画ですって?」 「……は?」 瀬名の告げた言葉に、理人と真奈美は同時に疑問の声を上げた。 「ちょっと待て、何の話をしている?」 動画とは一体何の事だろうか? 自分が彼の両親に託したのはただの手紙だ。 そう言えば、瀬名は再会直後何と言った? 全部知っていると言わなかっただろうか?

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