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第91話 運命

 時見は言った。自分達炎を地下へ押し込めるよう黒鳥に命じた、と。すべてはその力を守るため、地底までもが毒に沈むのを防ぐためだった、と。  自分の知らぬところで何者かの力が働いて築かれた歴史があったことを聞かされ、もしかしたら自分達二人の出会いもまた仕組まれたことだったのかもしれない、と陽向は思ってしまう。だとしたらそれは運命とは呼べない。誰かの手の上で踊っているだけの作られたものでしかないのかもしれない。  だがたとえそうだとしても陽向は構わないと思った。仮に誰かによって作られた運命だったとしても、今、ここでこうしてこの人を抱きしめている感情だけは、誰の干渉も受けてはいない。そうはっきりと言い切れるから。  闇の世界に永遠に堕ち続けるしかない運命だとしても、この思いがあれば立っていられると言えるから。  がたん、と、再び鳥籠が揺れる。  鳥籠がどんな仕組みによって動いているのかはわからない。鳥籠自身の意志により移動しているのか、ただ水の流れに翻弄されているものなのか、それすら自分達は知らない。  自分達はただ。この小さな世界で祈り続けるだけだ。  二人で。

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