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1-7 ハロウィンの日、はじめての吸血

「ううっ……やっぱりもって三日なんだ……」 「三日?」 「食事になる吸血は、三日に一回で足りるんです。でも、四日目以降になると、さすがにおなかが空いて……」 「食いだめも保管もできない、か」  こくこくと小さく頷くユーヤの前に、恭隆は跪いた。首輪をつけ、その先の鎖は自分が持っているにもかかわらず、彼の目の前に跪くのは少し滑稽だな、と心の中で笑った。 「食事、するんだろう? あまり、痛くしないでくれ」 「……祖父が言っていました、吸血は自分たちにとっては生命活動。相手の負担にならないよう、細心の注意を払え、と」  ユーヤの細く白い指がTシャツの襟もとを掴む。ゆっくりとずらしていけば、恭隆の首元が大きく開かれ、はだけていく。  鍛えられ太くがっちりとした恭隆の首から肩は、空腹であるユーヤの食欲を掻き立てるのに十分すぎるーーご馳走にすら映るほどだ。  じゃらりと鎖が重く鳴りながらも、身をよじらせ、口元が恭隆の首に近づく。こぼれそうになった唾液を飲み込み、ユーヤの口元は歪む。 「痛くないですよ」  鎖骨から舌をなぞり、首元に口元を添わせれば、血の流れる場所を確認していく。舌の感触から、どくどくと、血が通い心臓が動く音がユーヤに伝わってくる。  可愛らしく水音を立てながら吸い上げる。少し赤くなれば、マーキングは完了だ。牙を立て、首に深く刺していく。 「んぅっ……」  口元から洩れるユーヤの声と、自身の血液。くらりと、恭隆はどこか夢心地だ。貧血からくる目眩ではない。首輪をかけられながらも、食欲に身を任せ自身の血を吸うユーヤの姿が、艶やかに見えるからだろうと、感嘆の息を吐く。    ユーヤの喉の動きが、自分の血を飲んでいることを立証している。  本当に彼は、吸血鬼なのだ。    時間にして、30秒も経たなかっただろう。口元を離したユーヤは、牙を立てつけられた二つの跡をぺろりと舐めた後、持っていたハンカチで恭隆の首元を抑える。 「びょういん、と一緒です。吹き出ないように、少しだけ押さえます」  一分ほど抑えた後は、またゆっくりと離れる。跡が多少残るが、シャツを着れば問題ない範囲だ。恭隆にとってはキスマークより、背徳感を覚えた。 「……ありがとうございます。予想以上に、とてもおいしかったです」 「え、ああ。どうも……」  人間の食べ物と同じように、美味い不味いがあるのだろうか。浮かび上がる疑問を飲み込んで、思わず恭隆は頭を下げる。 「というより、予想以上って」 「運んでくださったときから、ずっと思っていたんです。おいしそうだなって……」 「初対面か……いや、俺も似たようなものだから何も言わないよ」  ユーヤは首をかしげたていたが、恭隆の心は分からなかったのだろう。  初めから、欲求まみれの目で見ていたのはお互い様なのだから。

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