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3-3 三連休最後、はじめまして兄です

 会話の内容から、一人暮らしであることを知っていたこと、驚かせたいと言ったこと、二人のうち出てきた「マサアキ」という名前を言えば、恭隆は頭を抱える。  ないと思っていたことが現実になると、不審者かと張りつめていた神経がぷつりと途切れ、一気に脱力する。 「兄さんたち、忙しいんじゃなかったのか……?」 「にいさん?」 「俺には二人兄さんがいて、正明って言われたほうが次男、多分もう一人は克彦兄さん」 「ご兄弟がいたのですね」  仲はいいが多忙なため会える機会は少ないのだが、いつの間にそんな計画を立てていたのかとドアノブを握る。 「今までと同じように、知り合いの子どもってことで通す。正明兄さんは警察だ、多分一番口うるさい」  食事も、プレイもお預けだと呟けば、ユーヤは空腹を満たせず悲しそうな目を向けるが、恭隆の険しい表情を見れば意を決する。 「頑張ります」  二人の隙をつくのは難しいかもしれない、だが頑張ってくれたユーヤには報いたい。  ドアノブをひねり、恭隆は中に入る。がちゃりと玄関の扉が開いたのを見て、台所から声がする。 「やっと帰ったか! 待ちくたびれたぞ」 「おかえり、やす。元気だったかい?」 「鍵が開いていたと思えば……やっぱり兄さんたちか」  分かっていたとはいえ、堂々と侵入をしている兄弟二人を前にして恭隆はうなだれる。二人は楽しそうにしているが、ユーヤの話だと多少なりとは自責の念があったことを知っているため叱るに叱れない。 「よく休みが取れたな。……克彦兄さんはまぁ、三連休だしなんとか、だけど」 「最近詰めていたからな、無理やりに休みを取らされた。……最近は例の事件で頭を悩ませている」 「誘拐事件かい?」  正明は頷き、さすがに深くは言えないが、と濁らせながらも、その態度から捜査が難航していることは想像に難くない。  黙ってしまった正明の代わりに、肩をすくめ申し訳なさそうに、克彦が話し始める。 「せっかくの休みだし、気分転換に恭隆のところに遊びに行って驚かせようかって言ったのは正明なんだ。まさか子供がいたなんて」 「そうそうこども……こども?」  正明は気づいていなかったようだが、克彦には恭隆の後ろに隠れていたユーヤの姿が見えたようだ。 「ああ、知り合いの子どもを、急に預かることになって……」 「なんだと!?」  ああ、やはり、正明は「大変だな」だけですませてくれないと思っていた。恭隆は引きつり笑顔を浮かべ、反対意見に対抗する言葉を探し始める。  この兄弟の中で子持ちなのは克彦だけだが、彼の子どもとてまだ小学校に通っているくらいだ。外見だけではユーヤは中学生くらいであり、難しい年ごろであるしなにより義務教育の年齢と思われても仕方ない。 「……そうか、各家庭、子どもには色々な事情がある。彼の負担にならぬよう、もし気がかりなことがあれば俺たちや父さんたち、地域の人に相談するのだぞ」  反対されそうなものだったが、予想外の言葉に目を丸くする。まさか支援をすることを言ってくれるとは思わなかった。 「この職につけば、様々な家庭環境があることを嫌でも認識させられるな。……高校生か」 「え、ああ……」 「そうか、最近は様々なやり方で通う方法もある。無理はせずに、だが甘やかすことはしないように」 「あ、ありがとう……」  あっけにとられている恭隆を、正明は不服のようで眉をひそめていた。その様子を小さく笑って楽しそうにしているのが克彦だ。一番背が小さいながらも、二人の弟を見守る姿は確かに兄なのだろう。 「やす、朝ごはん食べた? 僕らまだなんだ。よければ作ってくれないかな」  時刻を見れば8時過ぎ、いったいいつから家に侵入していたのかと何度目かのため息をついた。 「わりと図々しいな……。分かった、二人はリビングで待っていてくれ。ユーヤは手伝ってくれるか?」  ユーヤが素直に頷くのを見るやいなや、恭隆はあることに気づいた。途端、すぐに兄二人をリビングへ連れて行く。  せめて子どもの紹介をしろと正明に言われるが、朝ご飯を食べてからとつっぱねる。押し出されるようにリビングに入った二人は互いに顔を見合わせ、仕方なくソファーに座ることにした。  

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