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4-3 仕事再開、家事開始!

 自宅に残ったユーヤは朝食で使った食器を洗った後、頼まれた家事を始める。見よう見まねにはなるが、洗濯と軽い掃除を頼まれていた。  洗濯機には洗剤と柔軟剤を入れる場所が二つあり、間違えないよう分量を量ってから入れる。洗濯機を回している間に、掃除機をかけ始める。一人暮らしだった頃は仕事にかまけ、なかなか掃除機をかけられなかったようで、よく見ると埃がたまっている箇所がいくつか見える。 「……よし」  掃除機のスイッチを入れるが、モーター音がしない。遠くにあるはずの洗濯機の方がぐおんぐおんと音を立てている。 「あれ?」  コンセントを差し込んでからスイッチを入れる、恭隆から習っていたことを思い出す。電源のランプは緑に光り問題なく動いているはずだ。 「ちゃんと動いてる?」  ユーヤが吸込み口を覗き込めば、髪が少し揺れ吸引されかける。どうやら静音のモーターを使用している機種のようで、すぐに髪を引き剥がした。静かだがその性能は良いことを、身をもって知る。 「こ、これ……人間も吸うの?」  恭隆が聞けば「吸わない」と言うところだが、今はユーヤだけなので疑問もむなしく声は洗濯機に消される。掃除機の吸い込み口をゆっくりと床につけ、ごみを吸い取らせる。埃もするっとなくなり、もともと綺麗ではあったが、見る見るうちに小さなごみが消えていく。 「……そうじき、いいかも」  修行が終わって家に戻っている兄や姉たちも、同じように思ったことがあるだろう。人間が使っているものを持ち込んではいけない規則はなかったはずだ。ユーヤは楽しくなり、恭隆の自室以外の部屋に掃除機をかけていく。洗濯機の残り時間を確認し、リビングへ戻っていく。 「そうじ、おわり!」  頼まれていた分の掃除は終わり、もう少しで終わる洗濯機の様子を見に行くことにした。掃除をしているときから、ごうんごうんと大きな音を立てている洗濯機は乾燥のため振動が激しくなっていた。 「……おまえはすこし音が大きいね」  年季が入っているのだろうか、スイッチ部分のビニールが破れかけていることに気づく。電化製品は長持ちするものが多いとは聞いたことがある。 「新しいのだと、音は小さいのかもしれない」  それでもずっとこの洗濯機を使っているのだろう恭隆のことを考えれば、容易に買い替えは勧められないだろう。 「壊さないよう、気をつけるね」  ぴーっ、タイミングよく洗濯を終える音が鳴れば、まるで返事をしたかのように聞こえる。動作が止まったことを確認して、ふたを開ける。洗濯カゴに入れて、ハンガーが置いてある別室へ移動する。  干し方は教わったが、うまくいかなくても問題ないように、仕事で使うものは別にしてあった。ユーヤの私服と比べれば、恭隆のは一回り大きい。ズボンを干すための洗濯ばさみも、ユーヤの倍必要だ。干す場所のバランスを考えながら、一つ一つしわにならないよう気を配っていけば、洗濯カゴは空になった。 「せんたく、おわり!」  軒下に洗濯物をさげるために、部屋の窓から外の様子を見る。朝からの雲は晴れておらず、うっすらと雲の合間から日差しが見える程度だ。このくらいであれば、帽子がなくとも問題ないだろう。  窓を開け、ハンガーを持ち、えいやと一気に物干し竿にかけていく。冷たい空気が中に入りこみユーヤの頬をかする。これ以上は寒いと窓を閉め、一息つく。ちょうど9時を知らせる音が、リビングの時計から鳴り響いた。  頼まれた家事はこれで終わり、ユーヤは急に手持ち無沙汰になってしまった。この家に来てから日が浅く、一カ月たっても人間の住む世界のことは分からないことだらけだ。興味を湧くものはたくさんあれど、どこから手をつけようか悩みは尽きない。 (昨日の散歩で見つけた石碑は、午後からだってモトキさん言ってたよね……。どうしよう)  恭隆の部屋にさえ入らなければ、家の探検は問題ないはずだ。

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