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7-13 休息の日、癒したいがために(☆?)
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金曜の夜、恭隆が寝ている間に、ユーヤはこっそりとベッドから起き上がり、リビングへ向かっていた。恭隆の家で暮らす前から、ユーヤはよく夜中に起きてしまい、散歩などの暇つぶしをしていることが多かった。しかし玄関を開けることはさすがにためらわれ、テレビをつけることが暇つぶしになった。元来吸血鬼は深夜に活動する生き物だと言われていた習性が残っていたのかもしれない。
深夜のテレビ番組は昼間などと違いディープな内容を放送することがある。そのうちの一つに、男性出演者数人が、性の悩みや本音を言い合う番組があり、ユーヤは思わず画面を食い入るように見始める。
(ヤスタカさんを癒すヒント、ここにもあるかも……)
恭隆には『交換条件』以外で癒されたい願望があったようだが、自分に出来ることを考えはじめると自信はなかった。マッサージは素人が行うと逆効果になるようであきらめざるを得なかった。家事の手伝いとも考えたが、そもそも最近はユーヤがやっていることだ。動物のふれあいで癒されることもあるが、あいにくユーヤは変身が苦手だった。
(僕に出来ることは限られている……。ヤスタカさんの希望には合わせるけれど、知識はあった方がいい)
地元では近所に住んでいたサキュバスたちに聞かされ、自分では耳年増だと思っているユーヤだが、それでも足りないものはあるだろう。あくまでサキュバスたちは体験談を話しているだけであり、行為を受けた男性本人ではない。
『テレビでどこまで言っていいか分からないですけど、やっぱ咥えられるといいっすよね』
男性出演者がにやついた笑みを浮かべながら、「好きな人にされて嬉しい性行為」を話し始めた他の出演者たちは「でもさー」と反論を述べつつも、通常行っている行為であることに変わりはないようだ。
(咥える? ……何をだろう)
「その後のキスは無いでしょー? だって、シャワーの後とは言っても―――でしょ?」
テレビでは流せない単語だったのだろう、規制音が入りどこのことかは分からなかった。しかし、その後の文脈から、ユーヤはどこのことを指しているのか理解した。その途端、顔を真っ赤にして画面から視線を外すも、会話を聞き逃さないように耳を立てる。
「やっぱ口をすぼめて、きゅーってされると気持ちいいし、癒されるよなぁ」
「まぁねぇ。尽くされてる、愛されてるって思えるんだよねぇ……」
テレビの音声を聞きながら、ユーヤは自身の体を眺める。恭隆が触れてきたのは胸元までで、彼らの言う下半身には一切触れてきていない。恭隆はユーヤより知識もあるだろうし、触れてほしい箇所も分かるのだろう。
(そういえば『交換条件』のとき、僕は何もしてない)
出演者たちは口々に相手からの、口淫を含めた行為についての話題が飛び出し、楽しげな声でトークが弾んでいる。――ちょうど、番組の今回の話題として『男性たちに聞いた!僕の俺のフェラ事情!』というあけすけなタイトルだったからなのだが、ユーヤにとってみれば、初めて恭隆にできる、自分からの行動だと知れば、癒しになるのではと思い立ったのだ。
朝になり、恭隆が植原の家に向かうため家を出れば、家事を済ませ情報収集に取り掛かった。しかし、ユーヤはどこを見れば、テクニックを知ることができるか、思い当たる節が一つしかなかった。
掃除でも入ることができない、恭隆の部屋だ。
流石のユーヤも、癒すために約束を破ることはしたくなかった。とはいえ、ただ咥えるだけでは駄目なのだろう。テレビの内容を思い出すと、舌を使って舐めるとか、手を使ってから、など言っていた。イメージを固めようと目を瞑るも、思い出されるのは恭隆の優しげな笑顔と『交換条件』中の熱い眼差しだった。
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今ユーヤの目には、ユーヤの不注意もあり膨張した、恭隆の雄。ちょうどテレビで話題になっていた行為を出来る――わけなのだが、結局のところ、ユーヤがどうすればいいか分からない。
「……ユーヤ? 気にしなくていいからな? その、とりあえず一回降りてくれ」
ユーヤは素直に降りるも、そのまま床に座った。立ち上がろうとする恭隆は、ユーヤに阻まれ動けない。
「……えーっと」
「ごめんなさい、僕、やっぱり耳年増です……!」
「……ん?」
ユーヤは正直に、恭隆へ行おうとしていた口淫について、その前後を踏まえ本人に話した。懸命に癒そうとしてくれた思いを受け、恭隆は感極まり胸が苦しくなったが、ユーヤはそのことを知らず、眉を下げ落ち込んでいる様子だった。
「ユーヤ、ありがとう。……気持ち、すごい嬉しいよ」
「でも、結局僕」
「ユーヤが、俺のことを癒やしたいって思ってくれたことが嬉しいんだよ」
恭隆の心からの礼に、ようやっとユーヤも胸をなでおろした様子で、恭隆の身体の下の方を見る。
「……ヤスタカさん、大きくなってます」
「それはっ……ユーヤがそんなこと言うから……!期待しちゃうよ!」
「期待……? それじゃあ僕やりますから!ヤスタカさん教えてくださいね!」
「いやいや、あのなユーヤ、俺はユーヤのことをはじめは身体目当てと言われても仕方ないと思っているけど今はそれだけじゃないというかやましさ半分というか……」
慌てふためいている恭隆はほぼ一息で弁明をしているようだが、ユーヤには暖簾に腕押しのようで、もぞもぞと恭隆のズボンを降ろす準備を始めている。
「わー!待った、待ってくれユーヤ!」
「……なんですか?」
恭隆を癒そうとしているのに、意図しない反応を見せられているユーヤは少し不服そうに尋ねる。期待しているのならなおの事、恭隆には満足してもらいたい。
「やっぱり、だめですか?」
「いや、そうじゃなくて……。その、癒される方法って色々あると思うけど、もし今からの行為で賄うのなら、どうせなら『交換条件』としてやりたい」
「……僕は構いませんが」
「なら一度、俺を部屋まで行かせてくれ。『交換条件』の内容、忘れているわけじゃないだろう?」
そこまで言われてから、ユーヤは『交換条件』の内容を改めて思い出す。確か、拘束をさせることが目的だったはずだ。なるほど今のユーヤは特に縛られているわけでも、拘束を受けているわけでもない。
「……そうですね。ヤスタカさんは、そっちがメインでした」
ようやっとユーヤは納得して、恭隆の前から下がるようにして離れる。恭隆の心中は複雑だが、これからの行為に思考を移せば、一気に頬が緩む。手で口元を抑え、ユーヤを一人残し自室へと向かった。残されたユーヤは、手持ち無沙汰のように何をするでもなく座っている。恭隆の後をついていこうとも考えたが、部屋は見られたくないのかもしれない。そう思うと動きは止まってしまう。
(いつか、見に行けるのかな……?)
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