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⑥次の週はブラックナイトの出番がなかった
次の週はブラックナイトの出番がなかった。とはいえ、フレイムの活躍を見逃すわけにもいかないので変身してこっそり戦いを見に行った。
相手の雑魚は岩をイメージした怪人で、石を飛ばす技なども持っているようだ。
わざわざ変身してきたのは、いざとなったらさりげなくフレイムを助けようと思ったからだったのだが、杞憂に終わった。
フレイムは強かった。先日覚えたばかりのフレイムファイヤーを見事に使いこなし、動きもだいぶ俊敏になっている。
たしかに相手は雑魚だが、フレイムの動き自体も進化しているのだ。おそらく、あれから特訓したのだろう。そういう努力家なところも推しポイントである。
「ぎゃあああああ」
情けない声をあげながら、岩の怪人が消えていく。
手助けなんて必要なかった。流石フレイム。
今日もフレイムの活躍を見届けられ、満足して変身を解く。
(たしか、来週はブラックナイトが最後にちらっと登場したんだよな。フレイムが名前を呼んでくれる神イベント!)
とはいえ、ちゃんと名前を覚えてくれているだろうか。不安は残る。強調していたつもりではあったのだが。
今のところ物語と同じ展開をたどっているが。転生者である甲斐の存在がどう影響してくるかわからない。フレイムをすりきれるほど見たつもりではあるが、細かい部分までは覚えている自信もない。それに枠外の出来事まではわからないのだ。
せめてテレビの範囲まではなるべくあの脚本通りに事を進めたいが、そうなれば待っているのは甲斐の死だ。一度死んだ命、推しのために使うのも悪くないのだが、まだ深く考えられずにいた。
と、ポケットに入れていたスマホが震えた。メッセージアプリだ。
(ん? 正岡からだ)
――話したいことがある
文章だけではわからないが、どこか真面目な空気だ。
話したいこと? 改まって何を話したいんだ?
首を傾げつつも返信に悩む。と、こちらの既読がついたからか、焔が続ける。
――お前の正体を知っている
「は、」
顔から血の気が引いていくのを感じる。
まさか。
甲斐の正体? そんなもの、決まっている。
「なあ、ブラックナイト」
フレイムの声がする。でも、これはフレイムじゃない。
振り返るとそこには正岡焔が立っていた。
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