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媚薬①おねだりされたい

 鶴見博士から受け取った媚薬を手に、焔は悩んでいた。こんなものを使わなくても、自分達はラブラブだし。でも、いつもより快楽に溺れた甲斐を見てみたい気もする。  効果は中に精液を注ぐまで続くという。  ……やっぱり見てみたい。  甲斐に、「中に出して」っておねだりされたい。  週末は仕事のあとにお互いの家に行くことが定番になっていた。今日は焔の家の番だった。 「お疲れ様」  成人していたらビールで乾杯、とかなのだろうけど。高校生な二人はジュースで乾杯だった。今日はコーラ。  喉に痛いくらいの刺激を与えてくる炭酸を飲み込みながら、そっと甲斐の様子を窺う。  甲斐のコーラに入れた媚薬が、はたしていつ効き始めるのか。ドキドキしながら甲斐を見ているが、変わった様子はない。  失敗だろうか。ガッカリした自分に言い訳をする。そんな媚薬なんてものがなくても自分達はラブラブだし、甲斐だって口では言わないだけで中出ししてほしいに決まっているのだ。 「甲斐」  名前を呼ぶと、こちらの言いたいことがわかったらしく、恥ずかしそうに目を閉じる。緊張に震えた睫毛が可愛くてたまらない。  ちゅっと可愛い音を立てて、唇同士が触れる。離れて、また触れて。ドアをノックするように、唇を舌でそっとなぞる。おそるおそる開けられたところから、入り込む。  甲斐の舌は恥ずかしがりで、触れるとすぐに奥に引っ込んでしまう。それを優しく追いかけて絡めとる。焔が舌を絡めると、甲斐もおずおずとそれに応えてくれるようになった。 「んんっ」  口いっぱいに広がる甲斐の味と、漏れ聞こえる甘い声に、焔はすっかり興奮してしまう。  舌を吸うと、びくんと甲斐の体が跳ねる。逃げそうになる後頭部を捕まえて、舌を吸い続ける。  甲斐の体から力が抜けていくのを支えてやりながらじっくりと舌を絡ませ合う。 「――ふぅっ」  唇が離れ、甲斐が深く呼吸するのを確かめると、また触れる。 「ベッド、いこ」  甲斐からそんな可愛らしい誘いを受ける日が来るなんて夢にも思わなかった。暴走しそうになる自分を抑えながら、甲斐をベッドへ押し倒す。 「甲斐……」  再び、キス。  優しく優しく、甲斐の唇を舌で撫でる。 「――んっ!」  びくん、と跳ねた甲斐が、焔を引き剥がす。  いい雰囲気だったのに。こちらを突き放したくせに甲斐はずいぶん驚いたような顔をしている。 「……甲斐?」 「いや、やっぱり、今日はやめよう」  さっきまではとろとろで、今すぐ抱かれたいみたいな顔をしていたくせに、そんなことを言う。どうしたのだろうか。  だが、甲斐のペニスが立ち上がっているのは服の上からでも見てとれる。  急にどうしたのだろうか。いくら気が変わったとしても、ここでやめることもできない。  服の上から甲斐のペニスに触れて、じゃあこれはどうするのと聞こうと思った瞬間、 「――ぁああっ!」  甲斐がびくびくと体を痙攣させた。  あれ、もしかしてイッた?  でもまだちょっと触れたくらいなんだけど。  焔が首をかしげていると、甲斐は顔をこれ以上ないくらい真っ赤にしてしまった。 「今日は、しない」  やっとのことでそれだけ言うと、焔に背を向けてごろりと寝転んでしまう。いやいや、ここで我慢なんてお互いによくない。

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