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②これが正しい状態なのかもしれない

 朝はいつも通りだったのに、昼休みからおかしなことが続いた。いつもだったら一緒に弁当を食べるのに、焔は甲斐に何も言わずどこかへ行ってしまったのだった。  お腹でも壊したのかと思っていたが、その後もおかしなことは続いた。焔は授業の合間にも声を掛けてこないし、ホームルームが終わった途端、教室を飛び出していった。 「何、お前らまた喧嘩でもしたの?何があったわけ?」 「……さあ」  何があったのか知りたいのはこっちの方だ。  焔を追いかけようとしてもどこに行ったかわからず、結局諦めて一人で帰ることにした。  何か、焔を怒らせるようなきっかけがあったのだろうか。ちっとも身に覚えがない。  だが、昔どこかでこの状況を見たことがあるような気がした。  何か、どこかで。思い出そうとしていると後ろから走ってきた何かに肩を叩かれる。  振り返るとそこにいたのは星野光だった。 「黒川くん、何で……何で今更48話になってるのよ!!」 「――あ、」  必死の形相で叫んできた星野の言葉でやっとわかった。  この状況はあの『48話』と似ているのだ。  ……だが、ただ焔が甲斐を避けただけで、48話だとは思えない。 「さっき正岡くんが私の前にわざわざやってきて、『親友と思ってたんだ。アイツはそう思ってなかったみたいだけど』って思わせぶりに言ったの!何度も見た48話のセリフよ!」  ……だが、どうして?  もう甲斐は焔と『親友』ではなく『恋人』になっていたのに。どうしてそんなセリフが出てくるのだろうか。 「それで、変だと思って調べたんだけど、どうも正岡くん、朝に頭打ったみたいなの。これ、記憶喪失みたいなもので、48話のフレイムの世界の記憶になってしまったんじゃないかしら」 「……まじか」  え、あいつ頭なんて打ったの?  それに記憶喪失なんて、漫画みたいな話が現実にあるのだろうか。まあ確かにこの世界は特撮ドラマの世界なんだけれど。 「とにかく、はやく正岡くんを元に戻して!ラブラブなほむかいを私に見せて!」 「は、はあ……」  星野の勢いに押されて頷くが、元に戻すってどうやって?  また焔の頭を叩けばいいのだろうか。 「じゃあ、お願いね!」  そうして星野は去っていった。嵐のような女だった。 「元に、ね」  そもそも今こそが『炎の戦士フレイム』として正常な状態なのではないだろうか。甲斐と焔が結ばれたのは本来のシナリオとは違う出来事だ。  もしかすると甲斐が転生者だから、物語は歪んでしまったのかもしれないが、世界が元に戻ろうとしているのだとしたら。 (これが正しい状態なのかもしれない)  そうだとしたら、甲斐はブラックナイトとして、フレイムに倒されなければならないのだろう。

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