39 / 56
⑤よく考えたら肝心の記憶喪失がそのままだった※
49話を回避し、以前までと同じように焔と付き合い始めた。
放課後遊びに行ったり、楽しく一週間を過ごしたが、フレイムの世界に戻る気配もない。
良かった、これなら焔とずっと一緒にいられる。そう思った時、はたと気づく。
よく考えたら肝心の記憶喪失がそのままだった。
二人で焔の家でDVDを見ていると、焔が真剣な目で甲斐を見つめていることに気がついた。
あ、これ、いつもキスする前にしてるやつだ。そう気がついたけれど、でも、焔は記憶喪失で……付き合ってるけど、キスしたら、浮気みたいにならないだろうか?
いや、どっちも焔なんだけど。
そうして混乱しているうちに、焔の顔が近づいてくる。反射的に目を閉じると、次の瞬間には唇に柔らかいものが触れた。
唇が触れるだけですぐに離れて、軽く抱きしめられて、耳元に「好き」と吐息を吹きかけられる。
……ヤバい、ただそれだけのことなのに、勃った。
いや、だって、仕方ないのだ。
焔が記憶を失ってからずっとしてないわけで。自慰をしようにも前だけの刺激では射精できないし。焔が前に置いていった玩具を使ってみても、イケなかったのだ。生殺しのような二週間を送っていたのだから、ちょっと触れ合っただけで勃起してしまってもおかしくない……はずだ。
「甲斐……」
また、焔が近づいてくる。
甲斐の唇を擽るように焔の舌がなぞる。くすぐったいだけのはずなのに、その先を期待して、ゾクゾクしてくる。
焔は恐る恐るといった様子で、舌を潜り込ませてくる。それもそうか、この焔は甲斐と初めてのキスなのだから。
「んっ……」
遠慮がちに舌を絡められ、ちゅっちゅと音を立てて吸われる。たどたどしい様子が何だか可愛いと思えるけれど、これはたしかに焔のキスだともわかる。記憶を失っても、焔は焔だ。
甲斐の方からも焔に舌を絡ませてやると、戸惑ったようだったが、すぐにキスがもっと深くなる。
「ふっ……んんっ……」
キスだけで満たされるけれど、もっとその先が欲しくなる。触れられていない尻の奥がむずむずと疼くような気がした。
「甲斐、したい……」
熱を帯びた目が甲斐をとらえる。
甲斐はただそれに頷いた。
ベッドに押し倒されて、シャツの上から乳首に触れられる。散々焔にいじられて性感帯となっているため、軽く触れられただけで先端がぷくんと尖ってしまう。
「乳首、えっちだね」
お前のせいだと言ってやりたかったが、この焔には記憶が無いのでやめた。
つんつんとつつかれると甘い声が漏れてしまいそうになるのを必死で堪える。それでも焔には感じていることがバレているのだろう。
シャツを捲り上げられて、勃起した乳首をじっと観察される。
「……ひっ」
乳首にキスを落とされ、そのまま軽く吸われる。ちゅっと音を立ててそこを吸われる度に体が震えてしまう。
「甲斐、可愛い……」
「あっ、……んんっ……ほむらぁ」
記憶は無いはずなのに体は甲斐の気持ちいいところを覚えているのか。吸われ、舌で捏ねくり回され、唇ではむはむと挟まれる。もう片方の乳首は爪でぐりぐりされ、指の腹でぎゅっと摘まれる。ただそれだけの刺激なのに、久しぶりの行為ですぐに高まっていく。
「あ、……だめっ…………んんんっ」
あっさり達してしまった。まだ乳首にしか触れられていないのに。
焔は少し驚いたような顔で、
「すごい。初めてなのに胸だけでイクなんて……普段自分で弄ってる?」
なんて言ってくる。全部焔のせいだ。
「ごめんね、服、汚しちゃったね。脱ごうか」
「ん……」
下半身の衣服を剥ぎ取られ、尻にトロリとしたものがかけられる。前から思っていたが、この男、準備が良い。
「俺のが奥まで入るようにゆっくり慣らすからね」
「――ひんっ」
ローションをまとった指がするりと中に入り込んでくる。第一関節くらいまでしか入っていないはずなのにもっと奥に欲しくて。中が物欲しそうに咥えこんでしまう。
「…………甲斐?」
焔の声のトーンが変わる。
「甲斐、もしかして初めてじゃない?」
ともだちにシェアしよう!