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④そうして迷っている間に、49話
もう少しだけ頑張ってみようと決めたのは良かったのだが、焔は甲斐を避けたままだし、どうすれば事態が好転するのかはわからなかった。
後ろから殴り掛かるのはどうかと思ったが、失敗した場合ますます敵対するだけだろう。
そうして迷っている間に、49話。
正体がバレてから初めて、フレイムとブラックナイトが対峙することとなる。
攻撃を仕掛けるわけでも、何か話すわけでもなく、ただ向かい合っている。
49話と同じ……迷っているのだ。戦うべきか、どうするべきなのか。
――ちゃんと、正岡くんや私の気持ちも考えてよ
散々「炎の戦士フレイム」を、今のフレイムを、正岡焔を見てきたのだ。そんなこと、考えなくてもわかる。
戦いたくないに決まっている。だからずっとその道を探し続けて探し続けて、それでも見つけられずにこの瞬間も迷っているのだ。
迷っている間に黒川甲斐が諦めてしまったのが49話。
だが、一度世界がねじ曲がった想いを、甲斐は知っている。
甲斐はフレイムの前で変身を解くと、無防備なただの黒川甲斐としてフレイムに向き合った。表情は見えないが戸惑っているのだけはわかる。
「ずっと好きだった。付き合ってくれ」
「――は?」
あ、この光景前にもあった。
その時はセリフが逆だったけれど。
「いや、俺たちは正義と悪で……」
「仕事とプライベートはしっかりわける。それに上司の許可もとってある」
「上司?ブリザード?いいの?」
「安心しろ、俺たちの上司二人も似たようなものだ」
「え、何それ……どういうこと?」
少し話を盛ったが、良いだろう。特に上司二人の関係については星野が言っていたことなので事実とはだいぶかけ離れている可能性が高い。それでも今は焔の心を動かすことが重要だ。
「……だから、俺と付き合ってください」
元のシナリオに戻ろうとしている世界で、この手が使えるのかはわからなかったけれど、これしか方法が思い浮かばなかった。
焔がこの言葉で世界を変えたように、甲斐にもこの言葉で世界が変えられれば良い。
もし焔にフラれて、倒されるという未来が待っていたとしても、後悔はないはずだから。
焔はフレイムのまましばらく固まっていたが、やがて変身を解いた。
そのまま、気がつくと焔の腕の中にいた。
「…………好きな子を倒さなくてすんで、よかった。俺も、甲斐が好きだ」
安堵したように囁く焔の声が、ひどく懐かしく思えた。
――黒川くんが諦めなければ、大丈夫だと思うの。
もしかすると、黒川甲斐も諦めずにいればあの世界の結末は変わっていたのかもしれない。
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