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②フレイムってそんな話だっただろうか※

   焔に案内された先は見覚えのある部屋だった。  そもそもカギを焔が取り出した時点でおかしいと思うべきだった。だが甲斐の鞄から見つけていたのかとかそんな風に考えてしまった。だけど、ドアを開けたその先にあったのは、正岡焔の部屋だった。 「甲斐はね、俺の恋人だったんだよ」  聞いてもいないのに焔は勝手に話し始める。  さっさと逃げ出して家に帰ればよかったのだが、そもそも黒川甲斐の本当の家がわからない。仕方なく焔の話を聞いていたのだが、そうしている間に気が付けば両手を背に回され、手錠をかけられていた。  ……もしかして、ヤバい状況ではないだろうか。  そう思ったときには手遅れで、焔の顔がうんと近くにあった。  あ、と思った時には、今度こそ唇が触れた後だった。柔らかな唇が自身のそれに触れて、初めてなのに慣れ親しんだ感覚。 「ん、……っ」  唇同士が触れるとそれが自然のように思えて、ひどく安心している自分がいる。いくら推しだからって、男同士でキスなんてしても気持ち悪いだけなはずなのに。  かけられた手錠のせいで抵抗できないから?  唇をこじ開けて、焔の舌が入り込んでくる。 「んんっ……ふ、」  舌と舌とが触れ合って、触れたところが熱を持つようだった。熱く痺れて、じわじわと体中が熱くなる。  今すぐ突き飛ばして逃げないと。逃げないと……どうなるんだろう。  自分はこの先に起こることを知らないのに、黒川甲斐の体は知っている気がした。焔の舌がひどく甘く感じて、夢中で舌を絡ませる。  互いの唾液で口内が満たされて、溺れそうだった。 「甲斐、可愛い」  ようやく舌が離れたかと思うと、囁かれる。その声だけでペニスが熱を持つのがわかる。キスで十分に高められた体に、とどめを刺すように。 「忘れちゃったならまた覚えればいいよ」 「お、覚える……?」 「甲斐は俺の恋人で、俺のことが大好きなんだよ」  ぼんやりとした意識に焔の声が入り込んでくる。好き、そうだ、正岡焔のことは好きだ。だって推しだし。でもキスしたりとかそういう好きではなくて。  力の抜けた体をソファーに押し倒されて、上に焔がのしかかってくる。焔の顔は下から見上げても整っていて、胸がドキドキする。 「あっ……」 「ほら、甲斐の体はちゃんと覚えてるよ」  服の上から勃起したペニスを掴まれ、また唇が触れ合う。口内に甘い唾液が流れ込んでくる。  服越しとはいえペニスを扱かれ、キスがどんどん深まっていく。どうやって息をすればいいのかわからず、息苦しい。同時に一度も触れたことのない部分がむずがゆく思えた。 「これだけじゃ足りないでしょ?」 「……ちが、ぁっ」  違うと否定したかった。ペニスの先端をぐりぐりと刺激され、射精しそうなのにできない。  何で。焔の手が尻を撫でて、狭間に指を押し付けてくる。 「――っ!」  体に電気が走って、目がチカチカする。そこが勝手に焔の指を受け入れようとヒクヒクするのがわかった。  ……そんなはず、ない。  ――甲斐はね、俺の恋人だったんだよ  そもそも、フレイムってそんな話だっただろうか。

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