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love potion後
「ふあぁ……ねみ」
ロックを解除後ドアを蹴り開けてリビングへ行く。
スタジャンの隠しは紙幣でパンパンに膨らんで、ジーンズのポケットから溢れた分が廊下に舞う。
ご機嫌に遊び疲れてリビングのソファーにぶっ倒れた俺の後ろをスナイパーライフルを持った兄貴が横切って嫌味を投げる。
「いい身分だな。一日中どこで何してたんだよ」
「スロットで軍資金稼ぎ。聞いて驚けバカヅキだ、笑いが止まんねー」
ピジョンが苦虫を噛み潰したような顔になる。根っから堅物な兄貴はギャンブルを毛嫌いしてる。俺はそれを承知でポケットを裏返し、盛大に紙幣をばら撒く。
「777の大当たり出したんだ。ツレが舞い上がっちまって参ったぜ、札束ジャグジーで大はしゃぎ」
この所俺はスロットにハマってる。アンデッドエンドは映画館が一軒しかねえような辺鄙な田舎と違い娯楽が充実してるが、中でもカジノは別格。
頭の後ろで手を組んで仰向け、世間に疎い兄貴に得々と教えてやる。
「スロットの醍醐味はテメェで絵柄を揃えるこった。目押しの技術が必要になっからただの運ゲーじゃなくテクを試されるのもやり甲斐ばちこい、コイン一枚あたりの単価が高ェからでかく当てるスリルもあるしな」
何やらせても鈍くせえ兄貴と違って俺は特別目がいいし反射神経が優れてるときたもんで、スロットじゃ目下負けなしだ。
今夜は上機嫌だ。スロットで大儲けして気分がいいのに加え、高い酒でしこたま酔っ払って多幸感に包まれてる。
半ば睡魔が居座った頭で寝返りを打ち、犬歯を剥いて宣言。
「知ってっか?ツバメは獲物を狩る時最高速度に達するんだぜ」
「今言うんじゃなきゃいいセリフなのに」
「シケたツラで盛り下げんな、今月の家賃ドカッと稼いできてやったんだからもっと喜べ」
「結果論だろ、スッてたら滞納どころか追い出されてた。どうしてお前は堅実に生きられないんだよ、稼ぎを全部スロットに突っこむとか正気の沙汰じゃない、女遊びもまったく改まる気配ないし。もう17だろ、はたちこえても風来坊気取りで遊び惚けて暮らすのか」
「あ゛ーあ゛ークソ萎えるぜシツケえ説教、小姑かっての」
「兄さんだけど文句あるか。遅れて生まれた自分を恨め」
「俺はテメエと違って生まれながらにツキに愛されてんだ、まかり間違ってもギャンブルで破産なんかしねーよ。スった時のケツから魂抜けてくようなマゾヒスティックな快感が病み付きってな連中もいるけどな、勝負はデカく張って勝ってこそだろ」
「お前の場合ツキはツキでも悪運だろ」
「貧乏くじ引くのが趣味のミスターお人好しに言われたかねェな。俺様の甲斐性のお零れに預かってしのいでんのは誰だよ」
「死んでも直らないどころか悪化する類のギャンブラーだな。地獄に落ちたら罪人の年季を賭けるんだろうね」
「俺とテメエの違いは仕掛け方がわかってるかそうじゃないかってこった」
「まさかスロットでもイカサマしてるんじゃないだろな」
「ノーコメント」
指を曲げてレバーを引くまねをすれば、ピジョンがほとほと呆れた素振りで首を振る。
優等生ぶった面してやがるが、どうかするとピジョンは俺以上のギャンブル狂だ。からきし弱えくせに勝負事にゃすぐ熱くなる難儀な性分で、ガキん頃はポーカーのイカサマでぼられて泣きを見た。俺が誕生日にくれてやったドッグタグを担保にぶんどられて、直々に取り返しに行ったのを忘れたとは言わさねえ。
話してるうちにだんだんと頭に血が上り、スナイパーライフルを背負って今日も今日とて屋上へ夜間練習に赴く兄貴を嘲笑。
「駄バトにゃ豆鉄砲がお似合いよ。シコシコ屋上で撃ちっ放ししたって俺のおまけ止まりなんて気の毒で泣けちまうね、まァ引っ込み思案の兄貴にゃ日陰者の狙撃手がはまり役か」
「言ってろ」
「毎度毎度おいしいとこ持ってかれて腹立たねェの?」
「兄弟で手柄を奪い合ってどうするんだ。俺は俺の努めを果たすだけさ、全力でね」
露骨な挑発を落ち着き払って受け流すあたり、すっかり耐性ができちまった。
ピジョンは狙撃手だ。んでもって狙撃手の仕事は地味だ。俺が敵陣に突っこんでナイフを振り回し暴れている間、高所に臥せって豆鉄砲を撃ちこむのが主な役割なもんでめったに人前に出ることなく、賞金稼ぎの間でもいまいち名前と顔が知られちゃない。
一応コンビを組んじゃいるが、知名度じゃこの俺様に格段に劣る。
俺の相手に飽きたピジョンが冷たい一瞥をくれて出て行こうとするのにムッとし、弾みを付けて起き上がりしなその肩を掴む。
「格好付けんじゃん、昨日はお預けで寂し……」
「ッ!」
リアクションは劇的だった。
「……なんか熱くね?」
戸惑いがちに手を引く。
目を細めて観察すりゃあ服から出た肌が赤く火照り、引き締まった首筋がしっとり汗ばんでいる。
「熱でもあんの?伝染すなよ」
「栄養ドリンクが効いてきたんだ」
「栄養ドリンク?」
「劉からの貰い物。運ぶの手伝ったら一箱くれた」
「あの貧乏性が?気前いいじゃん」
まなじりを切なげに潤ませ、呼吸を上擦らせたピジョンが部屋の片隅に顎をしゃくる。
そっちに視線を放ると蓋が開かれた段ボール箱が置かれ、中にゃ茶褐色の瓶がぎっしり詰まっていた。好奇心に釣られて検めてみるが、ラベルの説明書きが漢字なもんで読めやしねえ。
見るからにまずそうな栄養ドリンクに関心が萎んで箱に戻す。
「漢方って発汗作用あんの?」
「健康にはよさげだよ」
「インチキくせェ。こんなに貰ってどうするよ邪魔だろ」
「うるさいな……全部俺が飲むよ、それでいいだろ」
まだ文句を言い足りない俺に堂々とシカトこき、逃げるように去っていく後ろ姿に舌打ち。
叩き付けるようにドアが閉じ、余韻を吸い込んだ静寂が舞い戻る。
一人になると途端に暇だ。
だらけてソファーに寝転がり、ピジョンの体温が移ったてのひらを意味もなく翳して見詰める。
「ふわあ……」
再びの大あくびに涙が滲む。睡魔が押し寄せて瞼が急に重たくなる。
部屋に戻るのも面倒だ、このままソファーで寝ちまうか。ごわつくスタジャンを脱ぎ、背凭れに引っかけて横になる。
腕枕に顔をのっけて目を閉じる。屋上からスタッカートの銃声が響く。ピジョンの銃声を子守唄代わりにまどろみ、ほどなくして眠りに落ちた。
銃声が止んでいるのに気付いたのは何十分後か。
「はあっ、はあっ、あァっふ」
蒸れた息遣いがすぐそばで聞こえる。
劣情に掠れた吐息は紛れもなくピジョンのものだ。
「…………?」
何が何だかわからないまま寝ぼけた頭で薄目を開く。
ぎこちなく蠢く影に焦点を凝らすと切羽詰まった兄貴の横顔が像を結ぶ。
声をかけようとしてやめたのは明らかに様子がおかしいから。
「はァっ……ぅぐ、なんで……熱……」
帰ってきたのにも気付かなかった。
灯りを消したリビングのソファー、暗闇に響く淫靡で性急な衣擦れの音。
傍らに蹲ったピジョンが顔を埋めているのは、寝る前に背凭れに掛けといた俺のスタジャン。
「はあ……はあ……」
ピジョンは俺の汗と煙草の匂いが染み付いたスタジャンを嗅ぎ、おもいっきり息を吸い込み、今にも蕩けそうな恍惚の表情をする。
無我夢中で頬ずりし、裏返して内襟を嗅ぎ、鼻と唇を擦り付ける。
「……煙草くさ……」
後生大事にスタジャンをかき抱き、余すところなく俺の体臭を独り占めする兄貴の顔はだらしなくふやけていた。
「スワローの匂い……はぁ……」
一体なにしてやがんだ。
目を疑った。
夢中でスタジャンを嗅ぐ傍ら、右手はズボンの中に潜りおっ勃った股間をしごく。
あのいい子ちゃんの兄貴が真っ暗なリビングで独り、俺のスタジャンを嗅ぎながらオナってる。
「んっぁ、スワローの煙草、スワローの匂い、うぅッあぁ」
寝てると思って油断したのか。
誰も見てねえと調子こいてんのか。
兄貴が俺のスタジャンをオカズにしてるなんて信じらんねェ。
これが初めて?
まさか常習犯?
「あっ、あっ、あっあっあっ」
寝てるフリを続ける俺には律義に指一本触れず、その代わりにスタジャンを揉みくちゃにし、ペニスを滅茶苦茶にしごいてやらしい声を上げまくる。
「どうし……ッは、全然おさまんない……」
噛み殺したくても噛み殺せず、ズボンの内側をまさぐる手が物狂おしさを増す。
ピジョンの喉が仰け反り、今度は前屈みに突っ伏し、スタジャンの匂いを大きく吸い込む。
「ンあっすわろっすわろー」
呂律が回ってない。赤ん坊みてえに舌がもた付く。
もう何回イッたのか、よく見りゃズボンや床のあちこちに白い残滓が飛び散っている。
俺のスタジャンにたらふく涎を吸わせ、挙句顔を右に左に擦り付け、尖りきって啜り泣くペニスをいじくり倒す。
「ん゛―――――――――――――――ッ…………」
連続で訪れた射精の瞬間、咄嗟にスタジャンを噛み締めてはしたない喘ぎが漏れるのを防ぐ。
抜いても抜いても出したりないのか、一度萎えた股間はすぐ力を取り戻してもたげはじめ、イき狂いの苦しみに歯を食い縛りのたうちまわる。
どうしたんだ。
誘ってんのか。
今夜は随分積極的じゃねェか。
そうからかって冗談にしちまうこともできたが、あえて黙殺を決めこんだのは意地悪い出来心だ。
事情はよくわからねェが、こんな兄貴の姿めったに拝めるもんじゃねェ。
ぶっちゃけ俺が求めるばっかりで物足りなく思ってたのだ。
あのピジョンが最高にエロいトロ顔で俺に欲情してやがる。
俺のスタジャンを嗅いで、シコシコオナってやがる。
「んぅ゛ッうくうッあッまたきた…………」
ピジョンが床を掻き毟って喘ぐ。
開いた口から濃厚な涎が糸引き滴り、突っ張った内腿がわななく。リビングにはイカ臭い臭気が立ち込めている。コイツ、どんだけヌいたんだ?
「はぁ……はあ……も、無理……イきたくなぃ勃たなぃ……からだ火照って……」
ピジョンがヒク付いてうわごとを呟く。
それでぴんときた、例の栄養ドリンクだ。ありゃただの栄養剤じゃねえ、その手の薬だ。
劉にお裾分けされたとかほざいてやがったが、何の手違いか超強力な媚薬をかっくらったせいで身体の火照りを持て余したピジョンは早々に練習を打ち切り、俺の寝顔とスタジャンをオカズにこっそりオナってたというわけだ。
電気を消して。
誰にもバレないように。
「…………」
ならそう言えよ。
素直に起こせばいくらでも相手してやんのに強情張りやがって……せっかく熟睡してんのをテメェの都合で起こしたくねェとか、またツマンねぇ遠慮してんのか。こともあろうに実の弟に劣情してンのを知られたくない見栄か?
ピジョンの立場になりゃ無理もねェ、日頃もったいぶって渋々応じるポーズをとってんのによく寝てる俺を起こしてまでせがんだとあっちゃ兄貴の面目丸潰れだ。
おもしれェじゃん。
「あァ――――――――――――――ッ!!」
ピジョンが大きく仰け反り絶頂に達する。
ズボンと下着をずらし、丸く剥けたペニスをてのひらで包んで、指にべっとり絡み付いた白濁を捏ね回し、それを剥き出しの内腿で拭い、残りをさも美味そうにしゃぶり尽くす。
「お、さまんな……くるし……」
泣け。
喚け。
助けてって言え。
淫乱なお前のこったそんなもんじゃ満足できねえだろスタジャン嗅いでるだけじゃ物足りねェだろやせ我慢は体に毒だ。
汗みずくのピジョンがスタジャンに顔を突っ込み、息を吸って吐きしながらリビングと廊下を隔てるドアを見詰める。
「ドアノブまでエロく見えてきた……」
それは本格的にやべえ。すげえな劉のクスリ。
続いて目の端で俺の狸寝入りを確認、汗と涙と色んな体液が染み付いた皺くちゃのスタジャンを顔面で押さえこみ変な声を漏らす。
「っふ……う゛―――――――――ッ」
どんだけ粘るんだよ。いい加減苦しそうだ。
土壇場で踏ん張る兄貴の最高にエロく最低に惨めな姿に嗜虐心が疼き、同じ比重の同情も湧く。
俺は内心嘲笑い、せいぜい寝ぼけた芝居を打って緩慢に手をさしだす。
「我慢なんかせず欲しがれよ」
ピジョンがぎょっとして凝視を注ぐ。寝言だとすぐ悟って安堵する、その頬にひたりと指を触れる。
ひどく熱い。溶けちまいそうだ。
続いて囁いたのは昨夜一緒にいた女の名前。切羽詰まった表情で目を潤ませるピジョンの頬を片手で包み、不敵に笑んで挑発。
「……気持ちよくしてやるよ」
俺はしたたかに寝ぼけたフリで、ピジョンはクスリでおかしくなって、互いに一線をこえる免罪符を与える。
「スワロー……っ」
ピジョンが崖っぷちで辛うじて踏みとどまり、必死に首を振るのが見える。
今すぐ押し倒して滅茶苦茶にしたくなる顔。でも、それはしねえ。普通のセックスにゃ飽き飽きしてた頃合いだ、たまにゃ一風変わった趣向もいい。
俺の方からは指一本出さずコイツの好きにさせる。
それでどうなるか見届けてやる。
「どうなっても知らないぞ」
他の女と取り違えられたピジョンの表情に怒りが弾け、嫉妬と悔しさで引き歪む。
次の瞬間、肩を掴んで組み敷く。
スタジャンを放り出したピジョンが俺の胴に跨り、固く勃起したペニスを片手で支え持ち、俺のジーンズに擦り付ける。
「俺のせいじゃない、お前のせいだ」
「んっ……ぁ」
珍しく威圧的な口調で脅すが、いきなりぶちこむ度胸も覚悟もないらしく、ジーンズに包まれた会陰でペニスをしごくのが関の山。デニムの生地越しに敏感な会陰をペニスが圧迫、摩擦の刺激にぞくぞくする。
ピジョンの分際で、今日は一段とデカくなってる。薬の影響か?体積と硬度を増した剛直が双丘の窄まりをこそいで抉る都度ぞわぞわした感覚が走り、勝手に腰が上擦っていく。
「俺ので濡れて色が濃くなった」
「ッは……はぁ……」
ピジョン如きのテクで感じてるなんて思われるのは癪だが、身体の反応は正直で倒錯した快感が止まらない。
素股はした経験もされた経験もある。ジーンズ越しの刺激はそれと違ってもどかしく、直接的な刺激欲しさに腰がくねりだす。
思わずピジョンの名前を口走りそうになって、慌てて唇を噛む。
「はッ……っぐ………」
ピンクゴールドの前髪から大粒の雫が落ちる。
とっとと脱がしてぶち込んじまえば簡単なのに、断じてそれはせずギリギリ抗っている。実際下着に手ェかけたら殴り倒す気満々だったんで拍子抜けだ。
ピジョンは俺の膝を立て、会陰でペニスを慰めるだけで一杯一杯だ。
本当は挿れたくて挿れたくて気も狂いそうなくせに、見上げた自制心にいっそ感心。
ふと悪戯心を起こし、暗闇で手を動かしてジーンズと下着をおろす。会陰へのねちっこい刺激のせいで、俺のモノもすっかり高ぶっていた。
まどろっこしいのはやめだ。
手ェ出すだけならセーフだろ。
「!!」
咄嗟に腰を引くのを許さず、ピジョンのペニスを引っ掴んで自分のと一緒に捏ね回す。
「------------------------んぅっうううッ!!?」
ぐちゅりと泡が潰れる音がし、軽くイッっちまったピジョンが突っ伏す。
「もっとデキんだろ?」
「スワロ……よせ……」
俺は兜合わせを続ける。
亀頭と亀頭を掴んで鈴口同士にキスをさせ、先走りとザーメンを潤滑剤にしてぬめりをよくし、やわやわと手を波打たせ張り詰めた袋をもみほぐす。
兄貴が嗜虐をそそる顔で抗い、俺の手をひっぺがそうとして力尽き、反対に取り縋って慄くのが可愛くてこっちがイッちまいそうだ。
「おかしいんだ、ずっとカラダ熱くて……上手くもの考えられない……気持ちいいの止まんなくてっ、お前と擦れると全部ぞくぞくしておっおかし、またイくッィくっあぁ」
「クスリのせいだ、劉を恨めよ」
「ただの栄養剤じゃないのかよッ……」
「まだ信じてんの?おめでてーな」
「はァっスワローもっと、もっとほしいお前のっお前のペニスと俺の、ぐちゅぐちゅするといィっあッふぁァあっ」
ピジョンが主導権を奪い、俺のペニスと自分のを大胆に捏ね回す。
「あッあッあぁぅあ」
俺の上で大股開き、しとどにぬる付くてのひらでぐちゅぐちゅペニスを混ぜ合わす。
もっともっととねだるように前後に身体を揺する度ピンクゴールドの前髪が捲れ汗が飛び散り、男に跨る母さんと生き写しの法悦の表情が暴かれ、撓う背と突っ張る腿の筋肉が痙攣。
「お前のッと俺の、ふぁァ鈴口ぱくぱく、キスしてんぅうッはァ」
開きっぱなしの口には唾液の糸が繋がり、弾む腰は次第に浅く勢いを増し、絶品のピンク乳首をお勃ってて悶絶。
「いいぜ……俺の身体で気持ちよくなんの、特別に許してやる」
正直こっちもたまんねえ。
媚薬でイき狂った兄貴の痴態をさんざん見せ付けられ、今にも組み敷いてぶち込みてえのが本音だが、どんだけ身体がしんどくても俺を抱くのを拒み抜き、ドロドロに煮え滾る快楽と葛藤でさらに感度を上げてく兄貴の方がぶっちゃけずっとそそるのだ。
コイツがどこまでイケるのか、どこまで上っちまうかためしてみてえ。
ピジョンがこの世の終わりのような顔で嘆く。
「できない……そんなこと……」
「あァ?なんでだよ欲しくねーのか」
「俺が兄さんで……お前が弟、だからに決まってるだろ」
「痛くしたら可哀想だってか。気持ちよくできるよう頑張りゃいいじゃん」
「だめだそれだけは……ッあァっあふあ、やァっすわろだってお前っ、お前のことそんなおかしな目で見てない、俺こんなっ、ぐちゃぐちゃにされておかしくてッはァっあっあふあっ、お前と擦れるとたまんなっはあッィくっィく、いいッ酷くされるとィくっお前とドロドロになってくのでもっ、兄さァ、だからッ、お前のことぐちゃぐちゃにしたら俺もっ駄目だ、俺っ自分が許せなッあぁふッくあァああああッあ!?」
「兄さんがどうしたってんだ、ふやけてろくに言えてねーぞ」
「あっうあっァぁうふァっあ動かすなっもっァあっ」
「俺のとテメェのがぐちゃぐちゃ溶けあって繋がってンのちゃんと見ろ。やらしー音聞こえんだろ」
「もっ、手、やめッあァあ――――――」
「は、生意気にもデカくなってら!俺のと張るじゃんなあピジョン、両手でぐりぐり回すと先っぽからどぷどぷあふれてくんぜ、倅も泣き虫だな」
残忍な嗜虐心と欲情に駆られ、俺のと互角に太ったピジョンのペニスを股ぐらに導く。
「ンッぐ、ァっぐぅ」
ピジョンが唇をキツく噛み、腰を小刻みに揺すってほんの僅かあとじさり、兄貴を欲しがって疼く孔を避けてじれったく窄まりを掻く。
入れてない挿れてない、それでもさんざん摩擦された会陰は腫れて感度を増し、粘膜に悦びを伝えてくる。
「あっあッあ、すっげピジョンそこッすげえのくる」
「スワロー気持ちいいっ、俺も、これすご……はぁっ、お前のすごい締まる……」
ピジョンはもうドロドロだ。俺もドロドロだ。
「うあっあッあふぁっあぁッああスアロいィっお前のっ」
「はァっあお前こそすッげでけェ、ァっあンな強く擦られッと感じちまうっァあ」
挿入を伴わない摩擦だけの刺激はともすれば延々続く生殺しで射精に至れない仮初の絶頂を引き延ばすが、媚薬で限界まで高められた身体はそれさえも感じまくって間欠的に汁を飛ばす。
「俺の股擦るだけでイッちまったのかよ早漏、えぇ?!ぬこぬこスコるだけでイケるなんて便利な体だなオイ、一体何発ヌいたんだ全然萎えてねえじゃんか!!」
「あっあッあぁあぅあっあっああっあ―――――――――――!!」
ピジョンの胸ぐらを掴み寄せ、抉りこむように腰を叩き付ける。
犯してるのか犯されてるのか両方か、内腿で挟み締め上げたピジョンのペニスが不規則に痙攣して大量のザーメンを撒き散らす。
コイツはまったく頑固者だ、とうとうしまいまで挿れずに済ませやがった。
たるい演技は打ち切って、クスリでわけわかんなくなったピジョンと上下を入れ替えソファーに組み敷く。射精の快感が物凄くて、口をぱく付かせ放心状態の兄貴を軽く平手打ち、力ずくで足をこじ開ける。
「俺のスタジャンで何回オナった?」
「見て、たのか」
「言えよ。何回」
「わからない……どうかしてた、俺おかしくて……と、止まんなくて……頼む言うな、俺のせいじゃないこんなっ、だってお前気持ち良さそうに寝てたから」
「抱いてほしいならそう言えよ」
兄貴の股間の粘りをすくい、わざと指で捏ねて見せ付ける。
「ドっロドロ。濃いのいっぱい出たな」
「ぐ……」
ピジョンが恥辱に涙ぐみ、手で目を隠そうとするのを無理矢理ひっぺがして情けなく歪んだ素顔を暴く。
その顔を見てるうちに辛抱たまらなくなった俺は、舌なめずりして断言する。
「覚悟しろよ、一滴残らず搾りとってやる」
「許してくれスワロー……もうキツい……何もでない……スタジャンはちゃんと洗って返す、シミも綺麗にする」
「汚ねえ汁とイカ臭え匂いは落ちてもテメェがだらしねェ顔でオナった事実は動かねーよ、俺の匂いくんかくんかして果てたんだろド淫乱が、身のねェスタジャンにさかって楽しかった?」
「起こしたくなかったんだ…………バレたらまた何言われるか、予感的中だ……」
「匂いフェチに目覚めたんならたっぷり移してやるよ」
既にさんざんイきまくり、憔悴しきったピジョンの顔が絶望に凍り付く。
夜は長い。
劉から盥回された胡散臭い栄養ドリンクの在庫はまだまだある。
怯えきって許しを乞うのに慈悲深く微笑み返し、一度腰を上げて段ボール箱から瓶をとり、ネジ蓋を小気味よく回す。
「!!よせっ、」
血相変えて止めに入るピジョンを足蹴にし、一気に干した空き瓶を投げ捨てるや転々とするのを見送りもせず、血流が集中して硬くなった股間を堂々とさらす。
「ああ最悪だ……恨むよ劉」
「アイツにしちゃ上出来。たまにゃ粋な仕事するよな」
この先の展開を予想したピジョンが自分の運命を呪って頭を抱え込むのをよそに、猥らがましく白濁がへばり付いた下肢を掴んで引き戻し、お望み通りの正常位で仕切り直す。
「下剋上なんてナメたマネ二度とさせるか。躾直してやるよ、俺の小鳩」
翌日劉は、事務所のソファーでひからびた呉哥哥の第一発見者となる。
ソファーの背凭れに両腕かけた姿勢でずり落ち、ブラインドから挿す爽やかな朝の陽射しに真っ白に燃え尽きた呉哥哥の姿に、劉は真顔で突っこむ。
「どうしたんスか、抜け殻になっちまって」
「いや……さすがに四股はキツかったわ、俺様ちゃんも若くねェな」
「あれから全員トコ行ったんすか?マジで?」
「どうせならみんな平等に可愛がってやりてーじゃん」
「クスリ飲んでまでオンナ抱きたい男って実在したんすね」
「言ってろ。ところで劉、例のクスリ捨ててねーだろな」
「ちゃんと信頼できるヤツに捌いたから安心してください」
「よく引き取ってもらえたな」
「元気になる薬だって触れ込んだら喜んで持っていきましたよ」
「一部端折ってねーか?」
「だいじょうぶっしょ多分……」
弱気に受け答えするも、ピジョンの信頼に満ちた眼差しの前にどうしても真実を打ち明けられなかったというのが本当の所だ。一番の理由は早く厄介払いしたかったからだが。
次に会ったら詫びを入れようと劉が反省した頃、栄養ドリンクの空き瓶が累々と転がるリビングでピジョンとスワローは仲良くひからびていたのだが、それはまた別の話。
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