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Child's Play(前)
ドアを開けたら兄貴がちっちゃくなっていた。
「いい所にきたスワロー助けてくれ!」
オーケー、これは幻覚だ。
俺は今しがた朝帰りしたところで、酒とマリファナにへべれけに酔っ払っている。その足で兄貴の寝込みを襲おうと殴り込んだら知らねえガキがいておったまげた。いや、正確には知らないのに知ってる気がする妙なガキだ。
「開けろよなんでシカトするんだ俺だよ俺、お前の兄さんのピジョンだよ!」
「詐欺の常套句だな」
背中で押さえたドア裏を叩くガキをよそに、ゆっくり深呼吸してまずは一本煙草をふかす。
次第にニコチンが回り頭が冴えてきた。よし。気を取り直してドアを開け放てば、泣きっ面のガキが両拳を振り上げた姿勢で固まっている。
「スワロー……」
困り眉の下の赤茶の瞳が潤み、噛み締めた唇が曲がる。
年の頃は10歳前後か、柔く繊細なピンクゴールドの猫っ毛はコシがなくへたれている。喉仏は殆ど膨らんでない、そもそも背丈が俺の肩位しかねえ。薄っぺらく頼りない身体にぶかぶかのモッズコートを羽織り、余った袖を二重に捲っている。顔立ちにはどことなく清潔感が漂い、育ちの良さを感じさせた。女なら……たとえばサシャやスイートなら母性本能くすぐるとかぬかすんだろうが、俺から見りゃ小突き回したいの一言に尽きる。拳固くれるのにちょうどいい位置に頭があるし。
兄貴によく似たすべそっかきに警戒心露わに凄む。
「なんで名前知ってんの?」
「だってスワローじゃないか。稼ぎ名はヤング・スワロー・バード、スペルもいえるぞ。Y、A、N、G」
「ストップ、質問変えるわ。誰から聞いた」
「最初から知ってたよ。頭大丈夫か」
ガキがさも心外そうなリアクションをする。殴りてえ。
「そもそもどこの世界に血を分けた弟の名前をド忘れする兄さんがいるのさ、そんな薄情者だと思われてたなんてショックだよ。お前の事なら何でも知ってるぞ、子供の頃可愛がってた犬の名前はオールドモップ、アナルパールで蟻地獄を削岩するのが趣味、好物はジャンクフード全般で特にピザとハンバーガー、寝相が最悪でしょっちゅうけりだされた、耳のピアスはピッキングの小道具兼用。腕には燕と鳩のタトゥーが」
「精通した年は?」
「知ってても言うか」
「じゃあニセモノだな」
ガキがしょんぼりする。
「どうすれば信じてくれる?」
「本物の兄貴ならエグいフェラするはずだ、喉の奥までバキューム」
「そんな最悪な判定聞いたことない」
「俺が考案した駄バト専用バキュームフェラ判定だよ」
スタジャンのポッケにミントガムがあった。銀紙を剥いて一枚放り込み、下品に噛んでから吐き捨てる。床に落ちたまま五秒経過、明らかな結論を下す。
「拾い食いしねえ。駄バトのぱちもんか」
「俺を何だと思ってるのさ」
「ミント嫌い?」
「どちらかといえばコーラのほうが……今のなし取り消し」
ご丁寧にティッシュに包んでガムを回収するガキをしゃがんで睨め付けりゃびびって身を引く。
「母さんがこさえたの」
「え?」
「こんなデケェのがいるたあ知らなかったが、親父に育てられたの?でもってその親父が死んで、母さんの手にゃ余るからこっちに押し付けてきやがったんだろ。男とギシアンしてーのにちまいのがいちゃ邪魔だもんな」
「お前は母さんをなんだと思ってるんだよ!」
「|売女《ビッチ》」
「そうだけどそうじゃないだろ!」
袖をぶんぶん振り回して叫ぶのが一生懸命羽ばたこうとしてる雛鳥見てえでおもしれえ……じゃなくて。
しかしまあ、母さんが知らない間に弟をこしらえたって線は薄いか。あの人は家族にこだわりを持ってるから、もしできたら手元において育てるはずだ。大前提として商売の邪魔になるとか気にするなら俺とピジョンを仕事場で放し飼いにしねえはず。とはいえ兄貴が突然子供返りしたと言われて納得できるはずもなく、咥え煙草で顎をしゃくる。
「本当にピジョンだってんなら証拠見せろよ」
「……わかった」
不承不承棚に近付いたガキが一枚の写真をとって戻ってくる。ピジョンが客のおさがりのポラロイドカメラで撮ったヤツだ。
「ほら、そっくり」
俺に写真を手渡して念を押す。
写真に写ってんのは10歳頃のピジョンで、隣ではタンクトップの俺がそっぽを向いている。母さんは息子たちの肩を抱き寄せて笑っていた。
手の中の写真と眼前のガキを見比べしぶしぶ降参する。
「……オーケー、わかった。万歩譲ってテメェがピジョンだとして、なんで俺の許可なく縮んでんの?」
「縮むのに許可がいるなんて初耳だ。その答えだけど、ぶっちゃけ俺もよくわからない」
「はあ?なめてんの」
「昨日の夜の事はぼんやり覚えてる、劉と快楽天に遊びに行って怪しいバーで酒をもらったんだ。したら飲みすぎたのかな、頭がガンガン痛みだして……送ってくれるっていうのを断ってアパートに帰宅、ベッドに倒れこんでから記憶がない」
「ちょい待て劉と飲みに行ったとか聞いてねえぞ」
「お前は踊りに出てたろ、誘おうとしてもいなかったじゃないか。文句は受け付けない」
あの野郎抜け駆けしやがって……ピジョンは「たまたまいなかったから」とかほざいてやがえるが、俺をのけ者にして羽を伸ばしたかったに決まってる。頭からケツまで計画的犯行だ。今すぐ劉をしばいてやりたかったが我慢し話を戻す。
「原因はその酒かもな。名前覚えてねーの」
「|白乾児《パイカル》ってゆー中国酒だよ」
「じゃあもういちど飲めば元に戻んじゃね、ひとっ走りいってこいよ」
「昼間は営業してない、夜まで待たないと」
「無理矢理開けろよ」
「人の迷惑を考えろ。それ以前にこんなかっこで出歩けない、大家さんとか先生とか知り合いに見られたら大騒ぎだ」
「俺の隠し子で通す」
「無茶だろ」
「イケる」
「否定しきれないのが怖いんだよ」
「弟の方が無難か」
今後の方針を検討しながらじろじろ見下ろす。
「なんだよ」
「いや、懐かしいサイズ感だなって」
「俺がこのサイズの時はお前はもっと小さかった」
ピジョンが自分の腰のあたりで手を水平に切る。さすがに苦しい。最初は仰天したが、考えてみりゃ貴重な機会だ。
「モッズコート脱げば?」
「くるまれてると落ち着くんだ」
「ふうん」
兄貴が10歳の頃俺は8歳だ。当時の事はおぼろげに覚えちゃいるが、あの頃から兄貴はヘタレで泣き虫でどうしようもないグズだった。よくダニが沸いた犬猫を拾ってきちゃ一緒に寝てたんで体中痒くなった。
「こっち来い」
「え」
拒絶は許さず腕を引っ張りゃあっけなく膝の間に倒れこむ。すかさず膝で挟み撃ち、逃がさねえように閉じ込める。綺麗な襟足と産毛が光るうなじが丸見え。ピンクゴールドの猫っ毛は肌触りがよくて、日だまりでまどろむような気持にさせてくれる。
「離せよスワロー」
「力ずくでどうぞ」
ピジョンが憤慨して暴れるのが愉快だ。
無理にこじ開けようとすれど腕力じゃ叶わず諦め、背中を預けたままずり落ちていく。
「いっそリトル・リトル・ピジョンに改名するか」
「笑いごとじゃないぞ、もし戻らなかったら賞金稼ぎを続けられない。お前ひとりで食ってけるのか?」
「問題ねーけど」
「だよな、忘れてくれ」
本格的にいじけちまった。面倒くせえな……膝に挟んだピジョンを揺すってあやす。ガキは体温が高い。モッズコートに包まれた身体に顔を埋めてると、下半身に熱が集まってきた。
「匂いはおんなじだ」
モッズコートからは今も昔も変わらねえピジョンの匂いがする。ピジョンはもぞもぞと落ち着かなげにし、上目遣いに俺を見る。
「ジーッと見んなよ。何」
「お前本当に顔がいいな」
「今さら?」
「この角度から見たことなかったし」
「惚れ直した?」
「ああ……」
声まで変わっちまってる。澄んだボーイソプラノが懐かしい、昔は寝ても覚めても毎日この声を聞いてたっけ。腕にすっぽりおさまる体とぬくもりに庇護欲を上回る征服欲を感じる。
ちょこんと膝を抱えたピジョンが耳まで赤くして文句をたれる。
「……あたってる」
「何が」
「ナニが。言わせるなよ」
「そっちも熱くなってんじゃん」
「子供に欲情するとか真性の変態じゃないか、見損なった」
細首に絡んだ鎖を掬って落とすのをくり返し、うぶな耳たぶを甘噛みする。
「ガキにさかってるんじゃねえよ、兄貴だから抱きたいんだ」
「結局ヤることしか考えてないじゃないか。本当に困ってるんだからな俺は、この身体じゃスナイパーライフルも重くて持てないし……構えた途端にコケちゃったらコントだろ」
「うける」
「うけない」
不満げなピジョンを抱きしめ、服の上から体を擦り付ける。
「入れてみねえ?」
「入るわけない」
「俺がその年の頃にゃ処女切ってたぜ」
「知ってたけど聞きたくなかった」
ここぞとばかり小さい兄貴にいたずらする。シャツの下をまさぐって乳首を摘まみ、すべらかな脇腹を揉みしだく。
「精通した時のこと覚えてるか」
「……ベッドの中、ッぁ、お前にあちこちいじられて……股……むずがゆくて、ふぁ」
「ちっこくても出せるかためしてみねェ?」
「よせばかっ、ンんっ、お前に突っ込まれたら絶対裂けるッあ、痛くするからヤりたくない離せ、ァあっ」
ガキのくせしてちゃんと感じてるのがエロい。犯罪くさい身長差と体格差が背徳感を煽る。
俺の膝の間で暴れるピジョン、けれども抜け出せず囚われてトロトロにとろけていく。
「っは、ァあ、ふゥっあ」
シャツの上からでもハッキリと形の浮きでた乳首を搾りたて、片手をコットンパンツに潜り込ませる。
さすがにこっちは小さい。器用に皮を剥き、幼く未熟なペニスをゆっくりしごき始める。
誤解しないでほしいが、小便くさいガキなんて本来俺の好みじゃねえ。だけど兄貴は別。ていうか兄貴は兄貴だし、小さくても大きくても俺にもてあそばれる運命は変わらない。
可哀想で可愛い兄貴。俺の兄貴。
「スワロー、ッぁ、んっ、く、なんかへん、腰むずむずするっ」
「精通もっぺん体験できるなんて超レアじゃん、二回目でもちゃんと導いてやるよ」
「あっ、ァっ、や、そこいじるなおかしッ、くちゅくちゅやだ、はァ」
「こっちもあの頃と同じサイズ感だ、なあ言えよピジョン、弟に剥かれてイかされた気持ちはどうだ?女みてえに腰くねらせてよがってたよな」
コイツを精通させた夜の事は忘れられない、当時の満足感は鮮烈に焼き付いている。
唾で湿した指で直接乳首を抓り刺激し、いじらしくヒク付くペニスをたっぷり可愛がる。尿道に溜まった体液を指で押して鈴口に運び、割れ目から滲む汁を竿に伸ばして馴染ませ、上擦る腰を追い立てる。
「あッ、ァあっ、ンうっ、ふぁ」
あどけない顔が涎と涙に塗れて弛緩しきり、細切れの吐息が淫蕩な熱を孕み、しけった猫っ毛の纏わる瞳が快楽に煙っていく。
下半身を煮溶かされる感覚に慄いてピジョンが涙声でせがむ。
「スワローよせ、ッよ、先っぽむずむずしてっ、熱っ、お前にいじくられるたびびりってきて、ふぁあ、もどかし、っのに、んァっ、上手くいけない」
「エっロ。下見てみろよ先走りでドロドロじゃん、ペニスがぴくぴくお辞儀してんのわかる?」
「お辞儀、とかゆーなよ、変態くさい」
イきたくてたまらないのにイきかたがわからない、第二次性徴前の子どもの身体じゃ射精に至れない。
未開通の快楽を腰の奥で沸き立たせ、じれったげに腰を揺するピジョン。
俺の手を切羽詰まって股ぐらに持っていき、ぐりぐりと膨らみを押し付ける。
「んっ、んっ、んっ」
小さな手が大きな手を借りて必死に動かす、先走りでぬかるむペニスを揉みくちゃにする、ぐちゃぐちゃ捏ね回すリズムに合わせ吐息だけで喘ぐ。
可愛いピジョン、食べちまいたい。ピンクの乳首はクリトリスみてえに固くしこって、指に挟んで潰すごとコリコリ気持ちいい感触を与えてくる。
「すわろっ、も、ィきた、出させろ」
「もっぺん俺の手で精通させてほしいって?」
「くり返すなよッ……」
「逆らうならお預けな」
「や、待」
乳首とペニスと尻をねちっこく責めまくる。俺の股間は張り裂けんばかりに猛ってジーパンを突き上げ、ピジョンの柔い尻にゴツゴツ食い込む。
ピンクゴールドの髪をめちゃくちゃに乱し、生理的な涙にしめやかに濡れた目を瞬き、射精の瞬間が近付いてはまた遠ざかる切なさに悶えるピジョンに意地悪く囁く。
「見た目ガキのくせに乳首びんびんに勃たせて、剥きたてペニスからぼたぼた汁たらして、本当に母さん譲りのド淫乱だな」
「違……」
「また固くなった。ケツに当たってんのわかる?ゴリゴリ窄まりに擦れてんだろ」
「スワローっ、あっ、すわろー」
「精通してえ?」
股ぐらに突っ込んだ手にグチャグチャ先走りを絡ませ、痙攣するペニスをキツくしごく。羞恥に苛まれた顔がさらに燃えだし、ごくかすかに頷く。
「ちゃんと口で言えよ」
「……俺のここ、ッは、お前の手で、ふぁ、大人にしてくれ……お前とおそろい、にッ」
次の瞬間理性の糸が断ち切れ、先走りに濡れ光り、細く尖ったペニスを一際強くしごきたてる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッぁあ!」
二度目の精通をむかえたピジョンが勢いよく仰け反り、ピュッピュッと白濁を飛ばして果てる。それを全部手のひらで受け止め、ただでさえ性感が高まった肌に刷り込んでいく。
「お望み通りおそろいにしてやったぜ」
薄赤く色付くうなじを吸い立て、びくりと震える華奢な身体をしっかり捕まえる。
本番はこれからだ。
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