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おまけ 案外気に入ったらしい
「届いた? 良かったー。それ、マジで美味しいから。うん、お母さんとお父さんにもよろしく言っておいて」
挨拶をして電話を切る。電話の相手は良輔の妹、美佳だ。あれから美佳とは良くやり取りをしている。多分、良輔より俺の方がマメに連絡を取り合っていると思う。
押鴨家の人間とは、物の送り合いが多い。向こうからは米や魚の干物、野菜や味噌、うどんなんかが送られてくる。こっちからは地元のスイーツやら佃煮やら。本当の実家みたいだ。
美佳は何度か遊びにも来ていて、ディステニーランドに連れていったり、牧場に行ったりした。美佳と良輔、俺が並ぶと、三人兄弟のようでもある。
「終わった?」
「うん。この前送った焼き菓子のお礼」
良輔を振り返ると、手に段ボールをいくつも抱えていた。部屋の角に積み重ね、車からまた段ボールを運び込む。
「まだありそう?」
「あと二個。小さいの」
「オッケー。俺持っていくわ」
車から段ボールを取り出し、軒先に向かう。古びた民家は、俺の実家である。週末に良輔とこの家で過ごすようになって、少しずつ私物を運ぶようになった。こっちにも服やら雑貨やらがないと不便だったのだ。おかげで閑散としていた居間は、段ボールだらけだ。元々あった収納では物足りないので、明日は棚を買いに行く予定である。
「そのうち車も欲しいよな」
「そうだな」
今はレンタカーを借りているので、自家用車ではない。車がないと不便な場所なので、中古でも良いから入手したいものだ。
「維持費考えたら軽自動車かな」
「今度、見に行こうか? これは何だ? 皿か」
良輔が段ボールを開けながらそう言う。取り出した皿は、新生活に向けて少しずつ購入していたものだ。俺も良輔も趣味は似ていて、地味な色味の焼き物が多い。特にお気に入りなのは萬古焼のご飯土鍋だ。その他にも大多喜焼のカップなどがある。工芸品は値が張るが、二人の新生活なので色々と良いものを揃えている最中だ。こうしたものを見に行くのもデートの楽しみなのだと知った。
(こっちは衣類……。棚買ってから開けるか)
衣類の入っている段ボールを横に置いて、次の箱に取りかかる。
「あ、ゲーム機だ」
あはは、と思わず笑う。良輔の実家に置いたままだったゲーム機を持ってきたのだ。俺はゲームで遊ぶ子供じゃなかったので、良輔と榎井に指導され学んでいる最中である。榎井いわく、「プリメロをやっていないなんて人生を損している!」とのことなので、有名大作RPGにも挑戦する予定である。
「こっちのこれ、お前の? 開けるぞ」
「んー? うん」
見られて困るものはないので、適当に返事をする。ゲーム機とソフトをテレビ台の下に並べていると、背後から「うわっ」と声がした。
「?」
振り返ると、良輔が真っ赤な顔で段ボールの蓋を閉じていた。
「どうした?」
「おっ、おまっ」
「ん?」
何事かと、良輔が塞いだ段ボールを覗き込む。
「ああ――」
中に入っていたのは、俺の愛用するバイブにアナルパール。それからセクシーランジェリーである。ランジェリーと言っても、男性用だ。一応は下着だが、穴が空いていたり透けていたり、セクシーな用途以外はない。
「なんだこれっ」
「いや、解るだろ。見たまんまだよ。そういや最近着てなかったな」
良輔とはそういうプレイをしてなかったし。
最近着ていないという言葉に、良輔が敏感に反応する。
「……他の男の前で、着たんだな」
「これはまだ着てないよ? おニュー」
良輔の反応に、僅かな嫉妬心を感じて、思わずニヤけてしまう。俺がセクシーな下着を着て、男を誘惑していたのが気に入らないらしい。そう思うと、申し訳ない気分と、嫉妬されて嬉しいという気分とが同時にわいてきた。
(確かに、良輔とはそういうプレイしてないよな)
二人とも十分に熱々なので、そんな小道具が不要だったのだ。互いさえいれば良いような心地よい関係には、邪魔だとさえ思える。
寮に置いておくようなものでもないので持ってきただけだったが、良輔には使用したくないと誤解されるのは問題だ。
(ふむ)
お前が片付けろと言わんばかりに段ボールを押し付けて、そっぽを向いてしまった良輔の背中をみて思案する。良輔の耳はまだ赤かった。
(なるほど)
どうやら興味はあるらしいが、「着て欲しい」とは言えないらしい。案外、ムッツリの癖に、変なところで初なヤツ。
「んじゃ、二階に持っていこうかな」
わざとらしくそう言って、段ボールを手に立ち上がる。良輔が少しだけ名残惜しそうに視線を向けた。それに気づかないふりをして、階段の方へ向かう。
背中の方で良輔の「はぁ……」という溜め息が聞こえてきた。
◆ ◆ ◆
赤い日差しが畳に差し込む。立て付けの悪い雨戸を閉じて、良輔が降りてきた。
「二階の戸締まりしたぞ」
「うん。ありがとう」
部屋はだいぶ片付いて、スッキリしてきた。二人の私物が増えたので、生活感も出てきている。
「良輔」
「ん?」
俺は良輔の前に立って、ニコッと笑う。良輔はつられるように笑って、俺の腰を引き寄せた。自然と鼻先をくっ付けあう。
「お疲れ。疲れてない?」
「うん、大丈夫」
「いちゃつく余裕はある?」
「それはもう」
クスクス笑って、啄むようなキスをする。ちゅ、ちゅと音を立ててキスをしながら、互いの身体を服の上から撫でる。良輔が、戸惑いの表情を見せた。
「……え?」
「ふふ。この下、なに着てると思う?」
「――」
理解したのか、良輔は顔と耳を真っ赤にして、俺を凝視する。ゴクリと、喉元が動いた。
良輔の手がおずおずと、カットソー捲る。指先が皮膚に触れる感触がもどかしい。
「っ、ん……」
甘い吐息を漏らして、良輔にされるがままに服を脱がされる。
白い肌に映える、赤と黒のレース素材で作られたベビードール。女性の丸みがない身体には、あまり合わないと俺自身は想っていたのだが、良輔を興奮させるには十分だった。
指先を胸の方に這わせ、レースの隙間から顔を覗かせる乳首をきゅんっと摘まむ。
「あっ、ん」
「エロ……下も、履いてんの?」
ハァと吐息を溢しながら、良輔が囁く。
「確かめて見て」
興奮した顔で小さく頷き、ファスナーを下ろされる。ゆっくりとズボンを寛げさせ、腿から膝へと布が滑っていった。
「……ん」
良輔の手が太股を撫でる。露になった下着は布の隙間から股間部分が見えていて、バックは穴が空いているものだ。
「お前……似合うな」
「そう?」
良輔の耳許に顔を寄せ、小さく「気に入った?」と囁く。良輔は赤い顔をして、コクンと頷いた。
「どうする? 脱いでしても良いけど」
下着の紐を引っ張ってそう聞くと、良輔は荒い息を吐きながら首を振る。
「このまま、したい」
そう言って、良輔は俺を抱き抱えるようにして隣の部屋に敷いてあった布団に横たえた。シーツの感触にピクッと肌が震える。良輔はすぐに俺の上に覆い被さり、唇を重ねる。ぬらりと舌が入り込み、俺の舌や上口蓋を擽っていく。
「んぁ、んっ……ふっ……」
甘い声が漏れる。
「乳首が窓から覗いてる……イヤらしいなぁ……」
「んっ、ばか……」
煽るように言いながら、ちゅうっと乳首を吸われ、ビクッと肩が揺れる。卑猥な姿を指摘され、羞恥心が煽られた。
「あっ、あ、あ……ん」
下着ごしに性器がピンと硬くなる。いつもの下着よりずっとピッチリしているせいで、形がハッキリ解るようだ。張り積めた膨らみをなぞるように触れられれば、快感に身を仰け反らせて叫ぶしかない。
「ひぁ、んっ!」
「歩、いつもより感じてる……?」
「ん、ふっ……、あ、ぐちぐち、しないでっ……」
手で弄くられ、気持ち良さに腰を捻る。イかされたらきつくなりそうで、愛撫を拒絶して獣のように四つん這いになる。
「こっち、して」
「っ……」
尻の割れ目もアナルも丸見えの下着を良輔に向け、愛撫をねだる。良輔はハァと息を吐いて、ローションを手に取ると指を這わせた。
「んっ」
つぷ、と指が捩じ込まれる。使い込んだアナルは良輔の指ならすんなりと呑み込んでしまう。二本の指でぐちゅぐちゅと中を掻き回し、良い部分を刺激する。
「あっ、あ、ん」
「歩……」
「良輔、ぇ……」
甘い声で名前を呼んで、良輔が欲しいのだと訴える。アナルに、堅いものが当てられた。
「ふ、んっ……、良……?」
ぬぷんっと挿入されたものの感覚に、ビクンと背中が揺れる。穴を押し広げ入ってきたのは、極太のパールだった。パールを繋ぐ節を通る度に、アナルがくぽくぽと開いたり閉じたりする。段ボールに入れてあったオモチャを出したらしい。
「あっ、んっ、なん……」
「挿入されてるとき、こんな感じなんだ」
アナルに指をかけ、くぱっと左右うに割り開かれる。中を覗き込まれ、カァと顔が熱くなった。
「良輔っ……」
「こういうの、好きだろ」
「っ、ん……バカ」
好きだけど。好きな人にされると、恥ずかしくて堪らない。良輔に全部、みられている。それだけで、興奮してどうにかなりそうだ。
「俺の咥えてる時、もっと拡がるよな」
「あっ、弄らないでっ……」
アナルパールが挿入されているというのに、指を横から入れられ腸壁をゴリゴリと擦られる。
「もう一本イケる?」
「……細いのなら……。ちょっと、良輔」
上体を起こして、良輔の唇を噛む。
「良輔のが、欲しいんだけど……」
「……うん」
他にも面白そうなのがあるんだけど。という良輔に、また今度な。と囁いて仰向けになる。パールを引き抜かれ、良輔の性器を押し当てられた。
「ん、早く……」
「おう……」
ぬっ、と良輔が入ってくる。ドクドクと脈打つ肉棒を咥え込み、腕を良輔の首に回した。
「良、輔……っ!」
肉輪を拡げ奥まで一気に貫かれ、衝撃に喉元を仰け反らせる。無防備な首筋を良輔の唇が舐める。服従させられているような、征服されているような背徳感に脳が痺れた。
良輔は最奥まで貫いた肉棒を一気に引き抜き、再び奥まで貫いた。楔に穿たれているような激しさに、くぐもった声が漏れる。
「んっ、んうっ、んっ」
いつもより激しく腰を揺らされ、シーツを掴む。良輔が掴む腰に指の痕が付く。腰は浮き上がり、繋がった部分からばちゅばちゅと激しい音がした。
「あっ、あ、あ! 良輔っ! 良輔っ!」
無我夢中で良輔にすがり付き、勝手に出る涙と唾液を流れるままにする。良輔のしたいようにさせようと脚を開けば、いっそう激しく穿たれた。
「ん――っ!」
ビクン、身体がしなり、どぷっと精液を吐き出す。良輔は射精の直前、アナルから肉棒を引き抜くと、俺の胸に向かって射精した。
どろりと、熱い粘液が身体にかかる。
「は、はぁ……っ、はぁ……」
「歩……」
頬に手を添え、良輔がキスをする。快感の残る身体に、甘いキスは蕩けるようだ。
良輔は俺を抱き抱え、向い合わせにして何度も唇を重ねた。
「ん、良輔……。んぁ」
「今度は、上に乗って」
いつの間にかまた硬度を増した先端を、濡れたアナルに押し当てられる。こっちはまだ休憩中なのに。
「ん、ちょっ……あっ!」
ずぷん、断りなく挿入され、ビクビクと身体が痙攣する。気持ち良すぎて、頭が変になりそうだ。
「あ、あっ……。ばか、俺まだ、動けな……んっ」
「じゃあ、俺が動くから」
そう言って、下から突き上げられる。
「ひゃっ! ん!」
「可愛い声……」
腕を捕まれ、下からズンズンと貫かれる快感に、頭がクラクラした。
「ちょ、良輔……っ、今日、激しっ……!」
「そんな格好で、煽るからだろ」
ハァと息を吐いてそう言われ、言い返せずに唇を結ぶ。
結局、その後も何度も体勢を変えながら、朝まで鳴かされたのだった。
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