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第25話
アダマスは執務室から寝室へとテイルラを連れていく。広いベッドの上にテイルラを転がすと、テイルラは白いシーツの上で枕を掴み顔に近づけ鼻を埋めた。すんすんと鼻を動かす姿はまるで本物の兎のようだ。さらさらと零れる髪と毛を撫でつつ、自分もベッドへ上る。期待するような甘い眼差しが向けられていることが見ずとも察せられた。
仰向けに転がるテイルラが纏っていたローブの紐を解き、左右にはだけさせると透き通った素肌が露になる。元は獣族向けのものであるためテイルラにはオーバーサイズであったそれは、明らかに丈も袖も余っており脱がすのは容易だった。だが、あえてアダマスはそれ以上ローブを脱がすことはせず、指先を立て、テイルラの首筋から胸を通り下半身へと伝わせる。ぞくぞくとする感触があるのか、テイルラはピクッと体を僅かに震えさせた。そのまま指先でテイルラの性器を撫でると、喉の奥から声を溢した。
次いで、つと裏筋をなぞるとテイルラはその絶妙な感覚に思わず腰を揺らしていた。顔を上げてみれば、テイルラはより強い刺激をねだるようにアダマスを見下ろしていた。片方の手はすでに耳を握っており、その先の行為のために身構えていた。
スンと吸い込んだ空気の中に、甘い花の香が混じっている。それはテイルラが放出しているものと考えずとも分かった。性器への愛撫はそこそこに、アダマスはテイルラの足を曲げさせ、奥まった部位を晒す。
「……あいかわらず、早いな」
「っ、ん……ッ、あんまり、言うな……。慣らさなくてもへーきだから、もう……」
「……急かすな」
とろとろに溶けたそこは、誘うように口を開けて待っていた。テイルラの言うように、すでに慣らす必要もないほどに解れている。受け入れることを知っていると言っても、常時こうはならないだろう。熱を孕み、濡れた入り口を指の腹ですりすりと撫で、決して挿入はせずにいると「アダム……」と、テイルラが名を呼んだ。見下ろす視線は、焦らすなと言いたげだった。
「お前、自分で慣らしてきたのか」
「ぅ……、だって、今日こそしてくれるって思ったから……」
「そうか、……それなら待たせて悪かったな」
テイルラの後孔の具合は、数時間以内に何かを受け入れたものとしか思えない様子だった。モズが手を出すわけがないとすると、他に考えられるのはテイルラ自身のみ。テイルラは今宵こそアダマスが手を出すだろうと踏んで、自らの支度をした上で部屋を訪れた。なるほど、だからやたらと行為をせがんだのか。この状態でいたのなら、早くより強い快楽が欲しかったのだろう。
「なぁ、分かったろ……? ホントにへーきだから……、もう、ほしい……」
「あぁ……、そうか。それなら存分にくれてやる」
テイルラのそれはもうおねだりではなく懇願だった。長くお預けを食らっていたのも同然なのだろう。そこまで求められて、その気になるなという方が難しい。
「わっ、ぁ……っ!」
「腕立てていられないなら好きにしろ」
アダマスは仰向けになっていたテイルラの背中を抱えあげ、強引にその場でうつ伏せに返した。曲げていた膝をベッドに立てさせると、突然のことにテイルラは枕に顔を沈め、慌てて両手をベッドに突き四つん這いになった。アダマスはテイルラの膝の位置を動かし、尻の高さを合わせると隠していたローブをたくしあげる。
「……お前、尻尾もあったのか」
「ぇ、今気付いたのか……?」
すると、引き締まった丸い尻と同時に、耳と同じ色をした赤褐色と白の丸い鈴のような兎の尾が現れた。てっきり、耳だけだとばかり思っていた。前回は終始正常位のままで、背中を見ることはなかったため知るチャンスがなかった。
アダマスは己の屹立した性をテイルラの会陰とアナルの間で動かしつつ、丸い尾を撫でてみる。耳と同じく柔らかく長い毛でできたそれは毛玉のようだ。なかなか挿れてやらないことが焦れったいのか、自分からも腰を前後に振るテイルラの動きに合わせて尾が視界で揺れる。
そんなテイルラに、アダマスは己を突き立てる。決して細すぎない美しいくびれを鷲掴み、ぐんっと引き寄せるとテイルラは高い嬌声をあげ、背中を逸らせた。
「あっ、あ、あぅッ! ぁ、おく、だめ……っ!」
その律動は、容赦なくテイルラの最奥を何度も貫く。それなりの質量のあるアダマスの性器では、そこに届いてしまう。びくと肩を震わせ、シーツを握りしめるテイルラの姿が見える。腰を打ち付ける度にベッドが軋む音が、淫らな湿った音が、アダマスのピストンの激しさを物語る。
「そこっ、そこだめッ、……あぅッ!」
「逃げるな」
前方へと腰を逃がすテイルラの肩を掴み、アダマスはテイルラの両手を持ち上げる。そうしてテイルラの両ひじを持ち体を支えつつ、もう逃げられない体に追撃を送り込む。体を固定されたことでより体重が乗ったピストンはテイルラを確実に追い詰めていく。
「あぅッ、ぅ、あ、あッ、だめっ! これ、でちゃ、う……ッ、ぁっ!」
「何がだめなんだ」
宙に浮いた頭が前後に揺れる度に耳が振れる。テイルラの制止も聞かず、小刻みにトントンと最奥を叩くとテイルラは腰を痙攣させ、キュンとアダマスを締め付けた。
「んぁっ、ぁ、ぬらしちゃう、から、っ! そこだめっ、もうでる、でる、ってッ!」
「イきたいならいくらでもイけばいいだろう」
「ちがう、ちがうッ……! ぁあっ、も、むり、っ、――ッぅ、ん、ぅ……」
直後、背中を丸めたテイルラは耐えきれず亀頭から透明な液体を吹き出した。その瞬間の、柔く下唇を噛んで薄く開いた瞳をキュッと閉じる、強い快楽を堪える表情はただアダマスの下半身を上向かせた。
「ぁ、え、まって、ぇッ! いまイったッ、ぁ、あぁッ!!」
「だからなんだ。一人で感じて満足するなよ?」
より激しく首を振るテイルラの肘を掴んだまま、アダマスはピストンを続ける。はたはたと落ちるのは吐き出したものの残りか、汗か、それともテイルラの頬を伝う涙か。もう判別はつかない。
もっと快楽が欲しい。快楽を与えたい。
この身を酔わせたのは酒か、それともこの甘い香りか。どちらでもいい。ただ、もっと、テイルラを味わいたい。腰をぶつける度にあがる喘ぎ声が脳まで犯していく。
――もっと、壊れてしまえ。
まだ夜は始まったばかりだと、テイルラに囁きかける。僅かに振り返った瞳に宿った感情は、期待か、絶望か、それとも。すでに欲の沼に沈んだアダマスに、それは分からなかった。
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