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承・乗りかかった船
じゃあ、これで。と千景は男と別れるため、一歩足を踏み出した途端だった。足首が悲鳴を上げた。
千景の体が斜めに傾く。地面に倒れるかと思いきや、しかしたくましい腕によって支えられた。
「足を痛めたのか」
――ああ、どうしよう。自分の足がこんなでは明日からどうやって働けばいいのか。
絶望が千景を襲う。
「よし、乗りかかった船だ。おれも手伝おう。花はもうないのか?」
「はい。今日の分はもう……。あのお侍たちに手折られました」
「だったら今日の売り物にする筈だった花代はおれが払おう。明日からはお前の花売りを手伝う。それでどうだ?」
果たして男はなんと言ったのだろう。
いったいどこの侍が町人なんかの手伝いをするというのか。
千景は驚きを隠せない。
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