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天・夜、明けて

「虎次郎様、なの?」 「やった! 成功だ!! 先生、ありがとうございました!」  虎次郎と思しき彼は、おそらく自分の目を治療してくれた医師だろう白衣を着た老人の手を握り、喜んでいる。  目が見えるようになったその日から、あんなに病弱だった母親のお仲の体調がずっと良くなり、今では動けるほどに回復していた。  この調子なら金貸しから肩代わりしてくれた借金も、千景の目の治療費だって虎次郎に返せる日が来る。  千景は信じられない気持ちでいっぱいだった。

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