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第3話
「ハアハア…蒼、浣腸して…。」
これだけ嘔吐が落ち着かないから、今から自分で浣腸するのは難しい。
人にされるのは嫌だけど、頼むしかない事実に泣く泣く蒼に頼った。
「…俺がして良いのか?…浣腸。」
「…ん。」
母さんが、ゴミ箱と新聞を入れた袋を替えてくれて、リビング横にある畳の部屋に入った。
普段なら部屋で自分で処置してるけど、今日は仕方ない。
蒼、会社に遅刻するよな…。
「…ごめん。時間。」
「あぁ、そんな事気にするな。下脱がすぞ。」
昔みたいに母さんに頼みにくいのが分かっているからか、蒼は嫌な顔をせずにマットレスと防水シートを敷いて準備を整えてくれる。
「…待って。やっぱオエェ…はぁ…はぁ…自分でする。」
「まだ吐き気落ち着いてないんだろ。今だけ俺がするから、足抱えて。…そう。消毒するな。」
ズボンとパンツを下げられ、蒼に足を抱えさせられると、ゴム手袋をはめた蒼の手が臀部に触れ割れ目を開いた。
蕾に濡れた脱脂綿が触れた感覚にゾクリと腰が引けた。
「力抜いてゆっくり呼吸して。チューブ入れるぞ。」
若干固さのある管が蕾に入れられる。
…グチ…グチュ…と潤滑剤の粘度ある水音が聞こえ、ゆっくりと体内に侵入してくる。
「…液…入れる時言って。」
「うん、ちゃんと言うから。力入れないで。」
浣腸用のチューブに刺激されたのか、グルグルと大腸が動き出したのが分かる。
そのせいで無意識に肛門に力が入ってしまう。
と言っても力むだけでは排便できないんだけど。
「…薬入るよ。仰向けになろうか。」
横向き寝から仰向けに体制を変えると、心許ない下半身にバスタオルを掛けてくれた。
蕾から出たチューブは、蒼の持つ薬の入ったシリンジに繋がっていて、ゆっくりと注入していく。
「蒼、待って!…吐く。」
大腸が刺激されたからか、体制を変えたからなのか、喉元に嘔吐物の熱さを感じて、袋に顔を突っ込んだ。
「オエェ…。ゲェ…ハアハア…腹痛てぇ。」
半分程注入された薬のせいで、排便欲求も襲って来て脂汗が背筋を湿らせた。
「もう注入し終わるからな。パット当てるぞ。」
吐いてる間も止めずにゆっくりと薬を入れられていたみたいで、一旦吐くのが落ち着くと大きめのパットを股に宛てがわれた。
「少しでも力んでよ。」
「……分かってる。今やってるだろ。」
人並みに力む事はできないため、腹を擦りながら排便していく。
僅かにパットが湿っぽくなって来たのが分かった。
「…っ…ぅぅん。はぁ…やべぇ。あんま出た感じしない。」
「まだ残ってる?」
「ん…。」
「パット広げても大丈夫?もう一本薬入れよう。」
もう僅かだけど排便してるのに見られるのは嫌だ。
でもこのままって訳にも行かない。
時間がかかれば蒼にも迷惑がかかるし…。
再び横向きになると蒼にパットを広げられ、ウエットティッシュで肛門周りを拭われた。
「もう一本入れるな。」
またチューブが肛門を通って大腸の中を進んでくる。
大腸奥の方に薬が広がって行くのを感じた。
「これでまだ出きらないようだったら、座薬しよ。」
「やだよ。一日排便欲求続くんだけど…。」
座薬自体にはそんなに持続性はないけど、座薬を入れると肛門付近の筋肉が緩和して勝手に漏れ出て来る。
夜の洗腸は楽になるけど、日中はパットを着けて過ごさないといけない。
制服の上からでもゴワゴワしているのが目立つし、カテーテル以外にもパットの替えも持って行かないと行けなくなる。
思春期の男子としては屈辱感は半端ない。
だけど俺の身体は、2本の浣腸剤を使ったのにスッキリ排便する事が出来なくて、結局蒼に座薬を押し込まれる事になってしまった。
「次の診察いつ?少し早めに受診した方がいいんじゃないか?」
「…蒼には関係ないだろ。俺のせいで時間ヤバいんだから早く仕事行きなよ。」
座薬のせいで肛門付近が気持ち悪い俺は、暫く動けないで居た。
そんな俺の頭をポンポンと撫で仕事に出かけて行った蒼。
動けるようになった頃には、既に小学生組も浬も母さんも家を出ていた。
残りの栄養剤の注入をして、三限目の途中から俺も登校した。
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