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第5話
昼休みからしていた栄養剤の注入で、五限目は保健室で過ごし、六限目の授業は途中から受けた。
夜に聖と新作のゲームをする約束をしているから、下校時間になり今日は真っ直ぐ帰路に着いた。
これから早めの洗腸処置をして、聖の家に行く予定だ。
家に帰ると、既に帰宅している匠と尚が、リビングで遊んでいる声が聞こえていた。
先に導尿を済ませてリビングに行くと、思いがけない人がダイニングテーブルに座りコーヒーを飲んでいた。
交番務めの警察官として働く親父だった。
「おかえり朔。話があるから、そこへ座りなさい。」
「っ…何なん?俺これから予定あんだけど…。」
夜番明けで昼前に帰って来て、いつもならまだ寝ているはずの親父に呼ばれ、動揺して僅かに声が上擦ったが、それを気取られるのは小っ恥ずかしくて親父を睨みつけ正面の席に座った。
「朔、昨日の夜どこに居た。」
「…ツレと遊んでただけ。別に何処でもいいだろ。」
「…ハァ…昨日な。同僚が、高校生が交番近くの路上でたむろって居るのを見かけて声をかけたと言っていた。その中にお前も居たらしいな。」
「だから何?」
「日付けが変わった時間帯だぞ?
お前は危うく補導されかけたんだ。
だが…まぁ交番に来て俺に説教される方が良かったのかもしれんがな。」
…チッ……分かってんならわざわざ言うなよ。
交番近くの路上に俺が居たのは、親父の姿を見てたからだ。
不良仲間と一緒にいれば、警官に声をかけられるのもいつもの事だ。
自分でもバカなことをしている自覚はある。
だけど仕事をしている親父をじっくり見れるのは、夜番で仕事に出てる日だけだ。
だから毎回この日に朝帰りしている。
浬はこの事を知らないから、親父のいない日に朝帰りすると馬鹿にしたように言ってくるのだ。
俺は不良グループに確かに居るけど、特に悪いことをしているわけでも、喧嘩が好きなわけではない。
殴られると痛てぇし…。
胸糞悪ぃし…。
だけど喧嘩は強いと自負している。
そもそも不良グループに入るきっかけも、ムカついた相手をボコってノックダウンさせた所を見られて、勧誘されたに過ぎない。
「まぁなんだ…。母さんに心配かけるような事だけはするな。門限が守れないなら連絡だけはしなさい。
浬の時の事もあるから、あまりくどくど叱るつもりもないけどな。
…それからな、朝帰りするならカテーテルは持って行きなさい。
出歩いている間は導尿していないんだろ?
合併症を引き起こしてからじゃ辛いのはお前だからな。」
「チッ…わーてるよ。…もう話終わったならいいだろ。」
また始まった。
親父も心配してくれてるのは分かるけど、導尿…導尿…みんなこれだ。
別に数時間サボったくらいでどうこうねぇってのに。
二階の自室に戻り、クローゼットの引き出しから洗腸用の物品を取り出した。
部屋の鍵をかけ床に敷いた防水シートの上に座った。
「…はぁ。面倒くさ。」
毎日しないといけない洗腸処置が、最近は特に億劫で軽く済ませるだけになっていた。
ズボンとパンツを脱ぐと、帰って来て導尿の時に替えたパットには薄い色の水溶便が既に漏れ出ていた。
ベッドに上半身を預けて、ウエットティッシュで肛門を拭い
今日は一日中筋肉が緩みまくっている肛門にカテーテルを入れて行った。
「…ぅぅ…気持ち悪ぃ…。」
この大腸の奥までカテーテルを入れていく行為が嫌いだ。
細い管が体内を進んで動くむず痒いような異物感にやっぱり途中で手を止めてしまった。
全然奥まで届いてないのは分かってたけど、洗腸液を入れて洗浄していく。
カテーテルを抜くと、今日はすぐに防水シートに水溶便が流れ出てきた。
本当なら便の色が無くなるくらいしっかり洗腸しないといけないが、
一回洗腸液を排出し終わると、今日はいいか…。
で毎回片付けてしまう。
別にサボってるわけじゃないし、なんとなく一回はやってるし。
まぁ…こんな状態だから調子悪ぃんだけど…。
俺、洗腸とか嫌いだし…。
炎症が起きて出血してないんだから大丈夫だろうって。
使った物は、汚物用のゴミ箱に捨てて二階の廊下にある洗面台で手を洗って家を出た。
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