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自己導尿トレーニング(過去編)
小学四年生になった朔には悩みがあった。
それは診察以外でも病院に行かないといけなくなった事だ。
来年、五年生から林間学校という宿泊学習が始まる。
今はまだ四時間おきに母さんが学校に来てくれて、導尿の処置と胃ろうに栄養剤を繋いでくれているが、泊まりでの宿泊学習には着いて来ることはできない。
その為自分で導尿と胃ろうの注入方法を覚えないといけなかった。
とは言っても胃ろうに注入するのは、栄養剤のパウチにチューブを付けて胃ろうに繋ぐだけで、今でも度々練習しているからもう既にできる。
問題は自己導尿の方だ。
まっちゃんこと松浦先生とトレーニングを初めて五回。
入院している時に何度か遊んでもらってるし、元々面識はあったけどトレーニングルームで指導するまっちゃんは怖い。
俺は痛いのが嫌でやりたくないって言ってるのに時間まできっちり特訓させられる。
だけどまだカテーテルを入れる所までいってはいない。
二回目の時は、仮性包茎の包皮を剥いての洗浄のやり方を教わった。
いつも包皮に被われていた陰茎は、とっても敏感でちょんと触れるだけでもピリッとした痛みに震えて、恐る恐る剥いて恥垢の洗浄をした。
ちゃんと包皮の中に付着した恥垢を洗っていないと感染症の原因になるからだ。
前までは何となく洗っていた恥垢も教わってからは、毎日包皮を剥いてきちんと洗うようになった。
三回目以降はカテーテルを自分で入れる練習をしている。
五回目になっても尿道口にカテーテルが当たるツンとした痛みが怖くて先端すら入れる事ができてない。
だけどいつものように母さんがすると、痛いけど躊躇なく入れてくれるからすんなり排尿に繋がる。
「朔、松浦先生との約束守らないと。」
「嫌だ!今日は休みますってまっちゃんに電話してよ!」
「お家でグズグズしてたら、おしっこ出す時間過ぎちゃうよ?」
「…いいよ。お家でいつもみたいに母さんがして。俺自分でするの怖いから。」
十六歳になった今の朔が、こんな恥ずかしい事を言っていたと知ったら悶えるだろう…。
「朔はビビりだから、無理だよ。大人になっても一人でトイレもできないな。」
「ビビりじゃない!トイレくらい一人できるようになるもん!」
中学一年の浬にこう言われ、ムキになって言い返す朔。
だけどこの浬とのやり取りで、朔は対抗心に火がつきどうにかトレーニングに通うようになった。
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