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第15話 ②
今日もまた朔は、トレーニングに来ていた。
「家でも少し練習して来たんだろ。成長したな。」
家でも自己導尿の練習をした事を報告すると、頭が揺れるほど撫でられ照れくさくて、少し素っ気なく頷いた。
「家ではどこまでできた?」
「…少しだけ…先っぽだけ入れれた。」
「お、すげぇじゃん!頑張れたな。」
「…んふ。ぅん。」
「じゃあ早速トレーニング始めよう。」
「うん。」
家でも自主的に練習ができた事で少し自信がついたのか、泣き言を言う前にズボンとパンツを下ろして、自ら物品棚に取りに行った。
四日前のトレーニングから成長した姿が見れて、松浦先生は少しだけ胸を撫で下ろした。
朔は、前回同様亀頭を覆う包皮をずり下げ緩い手つきで尿道口の周りを消毒していく。
割れ目の部分も脱脂綿でスーと拭った。
その手つきは、僅かにたどたどしいものの前回よりも慣れたものになっていた。
「消毒上手くなったな。」
「ぇへ。…母さんに導尿してもらう時にいつも俺が消毒してんだ。」
「それでか。どおりで慣れた手つきになったと思ったんだ。」
照れ笑いしながら恥ずかしいのか肩をすぼめた。
丁寧に消毒ができた後はいよいよカテーテルの挿入だ。
少しだけ緊張した面持ちになった朔は、ペリッとカテーテルの封を開いた。
「…まっちゃん、あのさ。」
「ん?なんだ?」
「このおしっこの管入れる時にね…。先っぽの穴に少しだけジェル着けてもいい?」
「いいよ。朔がやりやすいようにやってみな?」
朔は家で練習した時にカテーテルに着けた潤滑ジェルが、尿道口の上に垂れてしまった。
だけどそのお陰でカテーテルにだけジェルを着けていた時よりも滑りが良くなり痛みを感じにくかったのだ。
松浦先生が見守る中、パカッと左右に開いた足の間の陰茎にカテーテルで掬ったジェルを乗せて、カテーテルにもたっぷりとジェルを着けた。
だけどやっぱり痛いのが分かっているから、尿道口にカテーテルを近づけるだけでも時間がかかってしまう。
「ちょっと入れれたらお終いでいいよね?」
「そうだな。少し休憩挟んだらもう一回頑張ってお終いにしようか。」
「……分かった。」
朔はカテーテルを持ち直し、尿道口の上で透明な雫を作っているジェルを尿道内に押し込むようにそっとカテーテルを当てた。
「ッ!……ぅ…ふぅ…痛くない、痛くない。」
ほんの僅かに尿道口にカテーテルの先端が入った。
そのまま動く事が出来ずに『痛くない、痛くない。』と唱えながら天井を仰ぎ痛みが去るのを待った。
カテーテルが尿道口に当たっても動かなければ痛みはない。
だけどまだ二ミリほど先端が入っただけだ。
「朔、まっちゃんが手伝ってもいい?」
「ぇ、やだ!…奥に入れるの怖い!」
「もう少しだけカテーテル入れてみないか?
おちんちんの半分まで。今日の朔はできると思うなぁ。」
「ぅ、ぐすん……できないぃー!!」
泣き出してしまった朔の手に松浦先生は手を添えると、僅かに入ったままのカテーテルをそっと抜いてやった。
泣いていてよく見てない内に尿道内の粘膜を傷つける事があるからだ。
「よしよし。まっちゃんが悪かった。
朔、ちゃんと先っぽ入れれてたな。偉かったぞ。」
「…ヒッ…ズピ……ちゃんとできた。」
「うん、できてたよ。お茶飲んで休憩しような。」
「…ん。」
脱脂綿で亀頭に付着したままの潤滑ジェルを拭き取ってやり、とりあえずパンツを履かせてテーブルの前に連れて来た。
「朔、おやつこの中から一つ選んでいいよ。」
「…ぅ…ヒッ……コレにす…る。」
「ほら、涙拭きな?おやつの味が分かんなくなるだろ。」
「ふふ…ぅん。本当はチョコが良かった。」
「あ、見てたな?せっかく隠したのに。」
胃に負担がかかるチョコレートは、今食べる事を制限されている為おやつを入れた籠から抜き取ったのだが、ばっちり見られていたようだ。
「…でも吐くの落ち着いたらまた食べても良くなる。」
「最近、調子良くないんだってな?」
「ぅん。また内視鏡検査しよって秦先生が言ってた。だからもう少しまたお泊まりに来る。」
「そっかそっか。朔がお泊まりに来たら遊びに行くな?」
「うん!」
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