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第22話

「っう…ふぅん……ヒッ…ズピ……グズん…。」 本当はちゃんと分かっているのだ。 自己導尿がどれだけ大切で必要な事なのか。 だけど痛みの伴う導尿を自分でしないといけないと思うといつも心が折れる。 どれくらい泣いていたのか…朝に導尿をしてから病院に来てかなりの時間が経過していた。 お腹が張って痛みが出始め悠長に考えている場合ではなくなってきた。 松浦先生に言えば楽にしてくれるだろうけど、今叱られたばかりで話しかけに行くのに躊躇してしまう。 だけどお腹の痛みは強くなるばかりで、身体は限界だと悲鳴を上げていた。 腹痛に耐える為にお腹に入る僅かな力は、排便を促進してしまい紙パンツの中には、緩い水様便が流れ出していて不快感が増幅していく。 そんな状況になってようやく朔の気持ちは固まった。 休憩室からとぼとぼと出ると、トレーニングルームの中にあるデスクに座りパソコン作業をしている松浦先生に声をかけた。 「……ま、ちゃん…。」 「ん?…気持ち決まったか?どうするんだ?」 「………………導尿…する。」 「自分で?」 「…ん。ちゃんとトレーニング…する。」 「偉いな。一緒にできるように頑張ろうな。」 「…ぅん。」 「腹痛いんだろ。今日は、カテーテル入れてやるから先に出そう。」 「………まっちゃんは、少し手伝うだけでいい。」 「ぇ?!」 この朔の言葉には、さすがの松浦先生も度肝を抜かれた。 まさかここまで腹を括っているとは思わなかったのだ。 「分かった。とりあえずズボンだけ脱いだらお尻綺麗にして、処置台に行こう。」 漏れ出ていた水様便を再びシャワー室で流してもらい新しい紙パンツを着けて処置台に上がった朔は、少し緊張した面持ちで紙パンツを開き陰茎の消毒を始めた。 松浦先生に言われるでもなく丁寧に消毒を済ませると、カテーテルを持ちゆっくりゆっくりと尿道に沈めて行った。 「…ぁう"ッ!……ふっ、フゥ……いた、い……」 膀胱の手前の突き当たりまで到達したカテーテルの痛みで、抜こうと手が動いてしまうがなんとか踏みとどまる事ができた。 「…まっちゃん……こっから、入れて…。」 「分かった。朔、手はそのままな?」 ゴム手袋を嵌めた松浦先生の手が陰茎を支える朔の手に触れ、もう片方の手はカテーテルを持つ朔の手に添える。 陰茎をそっと平行に動かしてやり、カテーテルを進めていく。 そのツーンと響くような痛みに僅かに腰が引けてしまうが、なんとか膀胱の中に入り管を通って濃い黄褐色の尿が防水シートに流れ出た。 「…ふぅ。……できた。」 「うん、ちゃんと導尿できたな。凄いぞ朔!」 処置後、松浦先生に抱きしめられ頭が取れるほどに激しくわしゃわしゃと撫でられ褒められた。 トレーニングを始めて半年、ようやく排尿まで繋げられた朔。 完全に一人で導尿処置ができるようになるのももうすぐかもしれない。

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