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第23話⑤

朔が自己導尿のトレーニングを始めて半年余り。 いよいよトレーニングも大詰めだ。 「朔、今日は午前と午後の二回あるけど頑張ろうな。」 「……は〜い…。」 あまり乗り気じゃない返事をする朔。 一ヶ月前に松浦先生が手伝って始めて導尿に成功した朔は、あれからできたりできなかったりを繰り返して、先週のトレーニングでようやく二回連続で自己導尿に成功したのだ。 そして今日は今から一回目の自己導尿をして、午後から二回目の自己導尿をする予定だ。 だが二回目は、トイレで立位で行う。 本来自己導尿をする時は、トイレで行うため立位でできるようになってようやくトレーニング完了となるのだ。 「一回目はいつもどおりだよね?」 「あぁ、そうだよ。物品持って処置台に来てな。」 「うん。」 ロッカーでズボンとパンツを脱いで、銀のトレーに導尿用の物品を取り松浦先生が待つ処置台に戻った。 防水シートの上にM字に足を開いて座り、包皮を下げ消毒する。 ペリッとカテーテルの封を切り、カテーテルの先端にジェルを着けると、尿道口の割れ目を僅かに開きカテーテルの先を少しづつ入れていく。 「…ぅあ、…はふぅ……ふぅ…」 やっぱり痛い…。 少しだけ陰茎だけを持ち導尿を試みるが、尿道口を開いてないとカテーテルが擦れてヒリついてしまう。 「尿道口開いたままで大丈夫だよ。痛みを感じない方法で導尿できるのが一番だからな。」 松浦先生の言葉にコクコク頷き、カテーテルの挿入を続ける。 尿道の真ん中を過ぎ、陰茎の根元辺りまでカテーテルが到達した。 カテーテルを動かさないように慎重に陰茎を下に伸ばして身体と平行にしていく。 「…そう。いい感じだな。そのままゆっくりカテーテル進めて。」 陰茎の角度を松浦先生に確認してもらい、これから訪れる苦手な感覚にハフハフと呼吸が早まってしまう。 「…まっちゃん、手伝って……」 つい弱気な言葉が口をついて漏れる。 「できるよ。一人でもちゃんとできる。」 「…できないぃ。」 時間をかければかけるほど、膀胱に管を入れるのが余計に怖くなってしまう。 だけどなかなか踏ん切りがつかない朔は、カテーテルを尿道内から抜き取った。 「…ちょっと休憩する。」 「ん、そうか。…少しお茶飲もうな。」 松浦先生は、急かす事なく朔の意見を尊重しお茶の入ったコップを持って来た。 緊張で喉が渇いていたようで、受け取ったお茶をゴクゴクと飲み干し、気分転換に流しで顔を洗って来た朔は、再びゴム手袋を着けて導尿を始める準備をした。 「…朔、この半年で大人になったな。投げ出さなくなったのは凄い成長だよ。」 「ふふっ。そんなに褒められると恥ずかしいよ…。」 「どうしてだ?恥ずかしい事ないだろ。もっと胸を張って堂々としてみろ。」 腕をこずき茶化してくる松浦先生に朔の表情もリラックスしたものへと変わった。 「よし、次は絶対おしっこ出すまでする!」 「おぅ。頑張ろうな。」 「うん!」 皮を下ろしたままだった陰茎をそっと握り支えると、脱脂綿で尿道口の消毒をし、カテーテルを入れていく。 先程と同様にカテーテルが根元まで入ったら、陰茎を下に向けひとつ大きく深呼吸をした。 管を膀胱に入れる為にじわりと奥に動かすと、チリッと電気が走った。 「ッ!……もう少し…。」 膀胱の入口の筋肉は、緊張で固くなっていて少し力を入れてカテーテルを押し込まないと突破できない。 その時に腰からつま先にかけて突き抜けるツーンとした痛みに朔は怯んでしまう。 カテーテルを持つ手に集中して、奥へ奥へと管を動かして行った。 「っく、…ぅぅう"ン……っ…たぃ…ハァ…ヒュッ…ふぅ…」 膀胱の入口をこじ開けたカテーテルの痛みにじわりと額に汗が滲む。 だがようやく朝以来の導尿に膀胱に溜まっていた尿が管を通り防水シートに排出を始めた。 「ふぅ…。できた。」 「できたな。上手くなったなぁ。偉かったぞ。」 陰茎とカテーテルを持ち尿の排出を続ける朔は、腹の張りが楽になる感覚と今日も自己導尿を成功させた達成感に肩から力が抜けた。 尿の排出が落ち着くと、また少しだけカテーテルを抜いて膀胱に残っている分も全て出しきる。 後は、尿道内からカテーテルを手繰り寄せるようにして抜けば導尿は終わる。 抜けたカテーテルを伝い尿道口に雫をつくる尿を脱脂綿にそっと吸わせて、下げていた包皮を戻し亀頭を覆い隠した。 汚物入れの袋に使用済みの物品を入れて口を縛ると、ロッカーに行きパンツとズボンを履いた。 時刻はもう少しでお昼だ。 ひとまず家に帰りまた三時にトレーニングルームに来て、立位での自己導尿の練習をする予定になっていた。 「まっちゃんまた後でね。」 「あぁ、しっかり昼ご飯食べろよ。」 「うん、ばいばーい。」 ご機嫌に手を振って松浦先生と別れた朔は、トレーニングルーム前のソファーで待っていたお母さんと家に帰った。

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