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第27話

外来受付に声をかけると病棟に内線してくれて、病棟から迎えに来てくれたのは、看護師の山添さんだった。 山添さんは、小児科では数少ない男性看護師で、年齢は若いが頼りがいのある兄貴肌だ。 「朔、久しぶりだな。また少し背伸びたか?」 目尻に皺を寄せて笑う山添さんは、俺の入院バックを軽々持つと、頭をがしがしと撫でてくる。 「っ、やめろよ。……恥ずかしい…だろ。」 「ごめん、ごめん、ついな。ちゃんと病院に来れて偉いなと思ったら。」 「ガキかよ…俺、そんな年じゃねぇーし。」 「ははは。いつもちびっこの相手ばかりしてるから癖かな…。」 楽しげに話す山添さんをあしらいながら、エレベーターに乗り込み病棟に上がった。 真白病院の小児科病棟にあるナースステーションの中から行ける個室が俺の入院する病室だ。 ナースステーションとは、大きなガラス張りの壁で隔てただけの造りになっていて、俺の様子はステーション内の看護師からは丸見えだ。 この部屋は、常に気を配っていないといけないような急変の可能性がある患者が収容される事が多い。 俺は急変する事はゼロに等しいけど、栄養剤の注入での管理入院の時はいつもこの病室だった。 看護師からしたら、俺も目を離せない患者に値するらしい。 山添さんの後を追ってナースステーションに入ると、顔見知りの看護師達が口々に『頑張ろうね。』だとか『宜しくね〜』と声をかけて来る。 声をかけられると嬉しいが、やっぱり恥ずかしくて…視線を逸らしつつも『…ん』と短く返事を返した。 「荷物片したらこのガウンタイプの入院衣に着替えといてな。」 「…山添さん、秦先生いつ来る?」 「秦先生なら11時くらいに病棟に来るよ。」 「俺、今調子悪いから栄養剤始めるの昼過ぎからにしてって伝えといて。」 「調子悪いの?具体的な症状は?」 「……腹が気持ち悪い。なんか動きが悪い感じ。」 「ちょっとベッドに寝転んで。お腹触るよ。」 ベッドに寝転んで膝を立たせると、山添さんが下腹部からゆっくり触診し始めた。 「…上の方は確かに動き悪いね。臍の辺りから張ってる。今朝洗腸した時の便どんな感じだった?」 「……見た目はいつもと一緒。出た量は少なかったけど。」 と言うか、洗腸を適当に済ませたから全部出切ってないんだろうと思う。 「もう一回洗腸してみようか。準備して来るから着替えといてな。」 山添さんが部屋のカーテンを閉めてくれて、ナースステーションに洗腸の物品を取りに戻った。

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