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第30話

秦先生side 今日は1日病棟勤務だったが、同僚の東雲先生の担当の子…夕陽が、問題行動のオンパレードで、看護師に手に負えないと言われ、外来診療から病棟に戻るために数時間だけ外来で代理を務めることになった。 「秦先生、ありがとうございます。助かりました。」 「いいえー。夕陽の問題行動は落ち着いたの?」 「…まぁ、なんとか。とりあえず服薬はできたので看護師に託して来ました。」 「じゃ、僕は病棟に戻るね。」 夕陽と朔が同時期に入院ねぇ…。 夕陽は頻繁に入院しているけど、朔はサボり魔だから被るの久々だなぁ。 病棟に戻りナースステーション奥の病室に行こうとしていると、看護師から薬や点滴のオーダーを頼まれ、パソコンに入力していると、朔の怒鳴り声が聞こえてきた。 病室に入ると入口に背を向け息を荒らげた朔と、困り顔でパットを肛門に押し当てている山添くんが振り返った。 話によると硬くなった便が臍の上辺りで詰まっているらしい。 採便結果的にも大腸が荒れているのは、分かっていたが便が出ずらくなっているのは、ちょっと厄介だなぁ。 その後も朔は、自力排便すると頑張って力んでくれていたけど、薄い水様便が僅かにパットに漏れ出て来るだけだった。 朔の顔にも疲れが見え始め、ここで力尽きたら栄養剤の注入がしんどいだろうと考え、最終手段で鉗子で便を摘出することにした。 嫌だと暴れ抗議する朔に2人では難しいと判断しヘルプで吉川くんも呼んで、処置がしやすいように2人がかりで体制を整えてもらった。 「朔、鉗子入れるなぁ。危ないから動かないよ。」 嫌がり膝裏を突っ張っている朔に声をかけ、肛門に指を入れ横に僅かに開くと柄の長い鉗子を挿入した。 すると嫌がって身を捩っていた朔の動きがぴたりと止まり、大人しく口を開け力を抜こうと協力的になってきた。 嫌だけど、2人に抱え込まれ逃れられないと観念してくれたのかな。 「ぅあ、痛てぇ…ぁあ"、痛ぇよ…。」 「痛いよなぁ。少しずつ便取れてるからな。」 腹をひくつかせて、痛い痛いと唸る朔の目には薄らと涙が滲んでいた。 この鉗子は柄の長さが15センチで、先端のくちばし状の部分が3センチのものだ。 小さく開いたくちばしで、硬く詰まっている便を崩し取り除いていく。 その時に便に腸壁を擦られる痛みと、鉗子の痛みを伴った圧迫感から腰を捩ってしまいそうになる朔。 「…ハァ…はぁ……ズビ…いでぇ…ぅあ"!んん"ん"ー!痛え、なぁ!痛てぇ!もうやめろって!あ"あ"ぁぁぁ…ハァ…ゲホ…」 鉗子が奥に入る度に朔の声は大きく荒いものえと変わっていく。 それだけ腸壁も狭くなって、ただれている部分もあるのだろう。 慎重に鉗子を進めて…便を崩して…取り除いて…を繰り返していくとようやく便に触れなくなってきた。

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