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第31話
「朔、最後に洗腸液流してお腹洗ったらおしまいな。」
「…はぁハァ…もう、やだ…ズビ…ぅ…」
「嫌だったのによく頑張ったね。もう足離してあげて大丈夫だよ。」
「はい。朔、お疲れさま。」
「洗腸したら終わりだってよ。」
「洗腸液入るよ〜。ぁ、まだ力まないよ。ゆっくり鼻から吸って〜、口で吐く〜。そうそう、繰り返しててなぁ。」
さっきまで便で蓋をしていた部分がなくなり、奥にスルスルとチューブが入っていき、その感覚が苦手な朔は、排出しようとお腹に力を入れてしまう。
だけど朔の場合は、幼少期に受けた手術の後遺症から、腹に力が入れずらい為ほとんど入ってはいない。
それでもチューブの挿入が僅かに阻害されてしまうのだ。
十二指腸の弁の辺りまでしっかりチューブが入ると、腸の動きが少し脈打つような物に変わる。
そこから数センチ抜いて洗腸液を入れながらチューブを抜いて行くのだ。
「お水入るよ〜。」
「ッ、ぅゔ…んンー!…気持ち悪ぃ…」
「さ〜く、力まないで。深呼吸して力抜くよ。」
毎回流した洗腸液を早く排出しようとする為声かけをしつつお腹を摩って気を紛らわしてやる。
お尻にパットを挟んで、少しずつ洗腸液が流れ出して来るのを待った。
「…終わった。」
「もう排泄されてる感じないのね?」
「…ん」
朔からの申告にパットを取って、もう一度洗腸液を入れていく。
これを全部で4回繰り返すと、ようやくパットに便が着かなくなった。
「朔、お疲れさま。洗腸終わったよ。入院中の1週間の間に内視鏡検査もしような。」
「……ふぅ……うん……んぁ?え?」
「どした?」
処置の疲れからか洗腸の後半は排泄しながらうつらうつらしていたのに、突然すっとんきょんな声を上げ目を開けた朔。
「…1週間って何?」
「なにって、入院の話だよ?」
「ぇ…明後日帰れるんじゃねぇの?」
「ん?1週間って伝えてなかった?」
「いや、初耳なんだけど…。」
「最低でも1週間は必要だよ。だいぶ大腸炎症起きてるし、奥の方の腸壁も浮腫んでる箇所あると思うから、今回は栄養剤の注入だけでは終われないよ。」
「はぁぁん?!マジかよ…最悪だわ…。」
「そういう事だから、一緒に頑張ろうな。そろそろ栄養剤の注入始めてもいい?」
「……休みてぇから、まだ後にして。栄養剤入れたら気持ち悪くて寝れん。」
「分かった。それならもう少し後で入れに来るな。」
「…ん。そうして。」
布団を被り本格的にうとうとし始めた朔の頭を撫で病室を後にした。
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