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第35話
「あああ、出したいぃぃ!しんどいぃ…」
腹も下しているみたいに動き続けるし、排便欲求は耐え難いしで既に発狂しかけていると、看護師の吉川さんが入って来た。
「朔…さ〜く、しィー。叫ばないの。今手が空いてるから腰摩ってあげるから。」
「…これから夜通しとかマジ無理よ。点下速度上げて。」
「点下速度上げたら、今以上に排便欲求強くなるよ。しんどいと思うけど栄養剤入れたら身体楽になるから。頑張ろうな。」
時刻は刻一刻と過ぎ3時を回った。
病棟内は、3時のおやつタイムで子供たちのはしゃぐ声がナースステーションの方から聞こえてくる。
「朔、おやつ食べる?今日はどら焼きだよ。」
山添さんがおやつとお茶を手にやって来た。
「…おやつどころじゃない。腹が張っててヤバい。」
「吸収追いついてないかな…。少し触らせて。…抱き枕抱えたままでいいけど、手入れさせてよ。」
仕方なく抱き枕にしがみついていたのを緩めて隙間を作った。
「少し張ってるね。ガス溜まってる感じする?」
「…ん〜少し。」
「胃ろうのガス抜きしようか。そしたら今よりは楽になると思うから。」
山添さんがナースステーションに戻り空のシリンジを取って来た。
抱き枕を取り上げられて、病衣の前を開くと胃ろうにシリンジを繋げて少しずつ引いていった。
すると少しだけ腹の圧迫感が軽減された気がした。
「…ぉ、胃液も少し引けた。どんな。少しは楽になった?」
「…ふぅ…ん〜、さっきよりまし…」
「栄養剤注入してたらガスが上に逃げてくるから、ちょこちょこ抜こうな。おやつ食べれそう?」
「……食べたい…」
「良かった。甘い物好きだもんな。少しリクライニング上げるね。寝たままだと食べづらいと思うけど明日までは我慢な。」
「…ん。先にお茶飲む。喉渇いた。」
「さっき叫んでたからだろ。」
「だって…さ。耐えるのキツかったし。」
山添さんにストローを咥えさせてもらいゆっくり喉を潤した。
「もう少ししたら、注入に慣れて来ると思うよ。今もそんなに辛くないだろ?」
「…まぁ、だいぶ。でもその内また波が来るし…。」
注入に慣れたと思って過ごしていても、また強い排便欲求に襲われる。
そうなると寝返りを繰り返したり、足を忙しなく動かしてしまったり、腹に入った力が上手く抜けなかったりと、苦しい時間が続く。
それの繰り返しだから、余計にしんどいし夜間も寝ることがままならない事もあった。
看護師がちょこちょこ顔を出してくれたり、落ち着いてるタイミングでDVDをつけてくれたりして過ごし、病棟は夜の9時を回り消灯の時間になった。
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