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第37話
「…先生、ここ…いんの?…ふッ…ふぅ…ハァ…」
「もう少し落ち着いてくるまで居るよ。」
そう言うと腰を摩ってくれた。
「先生なんで来たの?…今日…ぅ、はぁぁ…ンん、当直ッ?」
「そうだよ。秦先生にも朔くんを宜しくって頼まれていたからね。今日は夜勤の男性スタッフが居ないから、様子を見に行って欲しいってね。」
「そ、なんだ…。…ぅゔ……」
「朔くん、だいぶ調子崩れてるって秦先生心配していたよ。だけどちゃんと病院に栄養剤の注入に来れて偉いって褒めてもいたよ。よく頑張ってるね。」
「…ぅん。横田先生?」
「ん?どうしたのかな?」
「先生って、俺が小さかった時にもこうやって寝るまで話してくれてたよな。注入が嫌で泣いてた時も。」
「そうだねぇ。少しでも辛い時間に寄り添ってあげたいからね。それは秦先生も看護師さん達も同じ気持ちだよ。朔くんが沢山我慢して治療を受けてくれてるのを知ってるからね。」
「……ん…」
横田先生の穏やかで柔らかい口調は、安眠効果を高める子守歌のようで睡魔に少しずつ飲まれていった。
気づけば朝の検温に来た看護師に体温計を挟まれていた。
「…ぅぅ〜。もう朝?」
「おはよう。朝だよ。9時前にはチューブ抜けるからね。」
「…うん。腹苦し…胃ろうのガス抜いて欲しい。」
「そうだよね。直ぐシリンジ持ってくるね。」
ナースステーションからにシリンジを取って来て、直ぐにガスを抜いてくれた。
「もう少ししたら、秦先生が診察に来るからね。」
「……ぅす。」
またチューブが気になり始めてしまいテレビの電源を入れた。
モゾモゾと身を捩ったりしながら、朝の情報番組を見ていると、部屋の入り口の方から秦先生の話し声が聞こえて視線を向けた。
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