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本当のことなんて言えないから
想いなんてカケラもない、なんて──真っ赤な嘘。
見え見えの虚勢。本当は、ただ認めるのが怖かっただけ。
もしこの心を自覚したのなら、その時は、俺の心がズタズタになってしまうから。
俺がどんなにあの人を好いても、あの人から返ってくるものは独占欲の域を出ない。
受け止めてもらえない愛ばかりが肥大して、いつしか俺は破裂してしまう。
ファミレス集合より数時間前──……。
「伊吹、今日は生徒会ないんだって。久しぶりに一緒に帰ろう?」
昼休み、真澄がそう言った。
幼なじみの俺と真澄は、昔はよく一緒に帰ったり遊んだりした。
だけど、俺が閑さんと知り合った頃──中1の秋頃から、滅多にそういうことはなくなっていた。
「ついでにお悩み相談聴いてあげるからさ。ファミレス行こ?」
真澄は昔から、俺の変化に鋭い。何も言わなくても、「何があった?」と訊いてきて、それは大体当たる。
「今日私、掃除当番だから、玄関で待っててね」
俺の前の席の御崎の席を陣取って笑う真澄。もはや恒例というか、御崎も気にすることすらなく、逆に真澄の席で近くの奴らと昼を食べている。
「……俺、風見先生に渡す書類あるから……真澄より遅くなるかも」
「ん、わかったよ。その時は私が玄関にいるから」
その言葉に頷いて、手元に残っていたサンドイッチを一口、齧った。
その『悩み』の元の、あの人が作ったサンドイッチ。
それが美味しいからまた、癪──いや、困るのだけど。
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