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ハプニングその1

「いらっしゃい、神楽からメールは貰ってるわ! 初めまして、桜和くん。神楽の母です。ゆっくりしていってね」 「お世話になります、すみません突然」 「気にしないでいいのよ! 寧ろ神楽がお友達を連れてきたことが珍しいの。だから嬉しいわ」  本当に嬉しそうにする母さん。そこまで率直に言われると息子としては気まずいというか。 「ところでね」  コロコロした笑顔が一転、少し困った顔になる母さん。 「今日、従姉妹のレミちゃんが来てるの。だからお客さん用の布団が埋まっちゃうのよ……」  そう言われてリビングの方へ目をやれば、確かに女子の制服っぽいスカートと黒い靴下を履いた足が見えた。  麗美……麗美か………。 「おにーちゃん!」 「久し振り」 「彼氏出来た!?」 「その質問は俺がすべきだよな?」  現在中学2年、紫月 麗美。この通り、嗣川と同類──腐女子である。  顔を合わせれば事あるごとにこの質問。「いい天気ですね」並の常套句である。 「……というわけだから、布団は神楽のベッドを二人で使ってくれる?」 「俺は構わないですけど……神楽くんの足は?」  俺に言ったわけではないらしい、くん付の呼び方はなんだか擽ったい。 「大丈夫よ〜神楽は寝相いいし、最悪お父さんを起こしてそこに神楽寝かせるから」 「母さん、たまにサラッと酷なこと言うよね…父さん泣くよ」 「あらぁ、まさかそのままにするほど鬼じゃないわよ。お母さんの部屋に連れてくわ」  母さんが支度をしにキッチンへ戻って行くと、今度はずっとうずうずしていたらしい麗美が口を開く。 「お兄ちゃん、すっごく美味しいシチュエーションなんだけど、ビデオ撮っちゃダメ?寝るときだけでいいから」 「寧ろそこが本命なんだろ。却下」  既にスマホを構えようとしている麗美。油断も隙もない。 「麗美ちゃん、だっけー? 駄目だよー? 俺と神楽はオタノシミするから」 「わあああっっ! 桜和さん、羨ましすぎ! 覗きたい!!」 「語弊がありすぎだバカ桜和!」  ハプニングその1、従妹(腐女子)。

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