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眼中
──カランカラン……
「いらっしゃいませ」
お一人様ですか?
あ、いや。待ち合わせです。
そう言ってこちらに歩いてくる男の人。
意外も意外だけど、時間は守る人らしい。
キョロキョロとしながら進んでいくその人が、私の横を通り過ぎようとした時、ようやく私は口を開く。
「こんにちは、一年 閑さん。お待ちしていました」
「んー……? 誰ェ?」
「藤波高等学校2年、生徒会会計の嗣川 真澄です」
「マスミちゃん?」
ああ、そう言えば──いたかも。
言いながら訝しげに眉根を寄せる閑さん。そりゃあそうだろう。
「伊吹からのLINE」
にっこり笑って、言ってやる。伊吹は何度もこれ以上に酷く心を裏切られてるんだから。
「失礼を承知ながら私が送らせていただいたものなので、ここに伊吹はいませんよ」
「ふぅん……」
一気に萎えたようにして踵を返そうとする閑さん。
「…どこ行くんですか?」
「伊吹いないなら帰るよー。君のことはどうでもいいから」
気だるげな目でそう言う閑さん。ああ、その目。そっくりですね。
その目の中に―伊吹は貴方しか見えないのと同じように、貴方は伊吹しか見えないのでしょう?
「その伊吹、二度と会えなくなっちゃうかもですね?」
「……はァ?」
ダン、と勢い良くついた手がテーブルを揺らし、コップに注がれたメロンソーダを波立てる。でも、こんなのに怯んでなんかいられない。
「だから、お話しましょう? いいじゃないですか、貴方の業についてなんですから」
私は伊吹がとても大切なの。だから、伊吹を散々振り回して傷付けるのは許さない。生半可な気持ちで私の隣から伊吹を取らないで。
「やだなァ、伊吹のオトモダチこわぁい」
そのヘラヘラした顔さえも、息吹を苦しめて、悲しませているんだと思うと、腸が煮えくり返そうなの。
「私は貴方が大嫌いです」
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