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望んでいたもの
少しして、玄関のドアが開く音がした。
「ただいまー……あれ? お客さん?」
「おかえりなさい。今日は神楽がお友達を連れてきてるのよ〜」
「えっ!」
ドタドタドタッと年甲斐もなく走ってくる父さん。これで会社では教育係なんてやってるんだから世の中は解らない。
「あああ、本当だ! 初めまして、神楽の父の渡です。そっかぁ……神楽、高校できちんと友達出来たんだなぁ……」
「お父さん」
「あっ……」
しまった、なんて顔してるけど。
「桜和には全部話してあるよ」
「中学の頃までのことなら、一応。」
目を見開く3人。母さんと麗美は硬直して、父さんは鞄を落とした。
「え、え、じゃあ、桜和さん、お兄ちゃんの体質とか全部知ってたの!?」
「一応は」
「ええええええええっっ!?」
ガッタンと大きな音を立てて麗美の椅子がひっくり返る。あーあー、フローリングが傷付く。
「桜和は信用できるって直感したし、…その、今生徒会入って頑張れてるのも半分くらい桜和のおかげだし……」
「うわっ! 嬉しー! 抱きついていい?」
「阿呆」
ポカンとする母さんたちを尻目にやっぱりいつも通りの俺たち。俺の、初めて出来た親友は、──……。
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