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恒例行事
それから数週間、桜和のアタックは続きつつもそこそこ平和な日常を過ごしていた。
俺の足も少しづつ治り始め、もう松葉杖で行動している。
完璧に折れていなかったのが幸い、と言うべきか。たまにほんの少しの距離だからと松葉杖を使わずに移動して桜和に凄く怒られるけど。
「だから何でちゃんと松葉杖使わないの!? まだ完治してないの! ちゃんと松葉杖使って行動して!」
そう、まさにこんな具合に。
「いや、だって一歩動けば足りる距離だし……」
「だっても何もない!」
桜和が俺を心配しているのはわかるけど、目立つからやめてほしい。
嗣川がにやけているのは絶対に朝言っていた新しい本のことだけじゃない。絶対に。
「ま、真澄先輩……その本、どんな話なんですか?」
「んー? これはねー」
「ハイ ウサちゃん駄目デスよー聞いちゃいけません」
「……っていうことなんだなー残念、愛里沙ちゃん。こわーいナイトさんがいるから教えられないの」
ふふ、と笑う嗣川。二人を微笑ましそうに見ている。
「マスちゃん、ウサちゃんにその類の話はしないでクダサイ。一般的知識より先にそっちが身についたら困りマス」
「えー? だって矜持くん来ることわかってたし?」
「……マスちゃんってたまにすごく怖いデス」
「え!?」
何で何でー!? と叫ぶ嗣川と、鵜野をさり気なく遠ざけながら変なところでよく当たる勘が怖いデスと答える佐神。珍しく起きてきちんと仕事をしている月詠。うるさいけど、これが俺たちの生徒会室で。
だけど最近はちょっと変わってきてて。
──コンコンコン
「うわ」
あからさまに顔を顰める桜和とそれに苦笑いする佐神。
「開けちゃうの? やめよ? どうせあいつだよ? やめよう? ねぇきょーじー」
「一応お客さんデスから」
「矜持!」
子供並みに駄々を捏ねる桜和。どっちが年上だ。
──ガチャ
「やっほー、遊びに来たよー!」
「有休とって母校来るって何なの有休無駄遣い兄ちゃん」
「いきなり辛辣だなぁ桜和は」
刺々しく言う桜和と何処吹く風と受け流す和音さん。
桜和は俺を後ろから抱きしめてものすごい警戒している。
「神楽くんもそんな奴に好かれて大変だねー」
「……まぁ」
「神楽ひっど!? 同意しないでよ!」
大変なのは事実だし。
俺がもう落ちていることを知らないでこんな風に触れてくるんだから、堪ったものじゃない。
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