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告白

「神楽、今……何て」 「あ、……ぅ……」  言った。言ってしまった。自然に胸から溢れて、口を突いた。まだ、言うつもりなかったのに。どうしよう。俺、俺………お、れ……。  恥ずかしくて今すぐ桜和から離れたいのに、桜和は俺を放してくれない。 「桜和……はな、せ………」 「どうして?」  トク、トク、目の前の胸から聴こえる心音が平常より速い。 「……ねぇ、神楽」 「──っ」  ぎゅ、と更に強く抱きしめられて、シトラスの香りが強くなる。耳元で囁く声と、かかる息がすごく熱くて。雪のことなんて頭から全部吹っ飛んだ。 「今の、本当…………?」  きつく抱きしめる腕が、俺が答えるまで放さないって、そう言っている気がする。 「ねえ、答えて?」  耐えられなくてきゅうっと目を瞑る。心臓が馬鹿にならないくらい速く動いて、気持ち悪い。 「……おれ、は……」 「うん」 「桜和の、ことが……」  好き。こうして抱き締められるだけで気持ちが、想いが溢れて溺れそうになるくらい、大好き。  はく、と魚が陸で酸素を求めるみたいに口をパクパクさせるだけで、声が出ない。  言いたい。伝えたい。どうせもう既に言ってしまってるんだ。もう何てことない。 「桜和が、好きだ……」

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